自転車日本縦断最速記録更新の永関さん、米国横断挑戦「各地で東京五輪のプロモーションしたい」

スポーツ報知
鹿児島・佐多岬に到着し、当地の人たちに温かい拍手で迎えられた永関さん

 北海道から、世界へ―。砂川市出身の永関博紀さん(28)が壮大な挑戦を続けている。今年7月、自転車による日本縦断のギネス世界記録に挑戦。北海道・宗谷岬から鹿児島・佐多岬までの約2700キロを、7日と19時間5分で完走し、既存の記録を21時間近く更新した。大手IT企業を辞め、お笑い芸人転向を目指したり、無職の期間も過ごした苦労人。1年以内に世界5大陸の最速走破を目指しており、20日からは米国横断(約7200キロ)を開始する。

 その目は、希望に満ちている。永関さんは7月、自転車の日本縦断最速記録を更新した。「覚悟が決まっていたので、記録を出せた安堵(あんど)感が込み上げました」。イタリア人女性の持っていた“日本記録”を1日近くも縮めた。ギネス世界記録にも申請中で、近日中に認定される見通しだ。

 過酷だった。8日間、自転車で走り続けるため、から揚げやガム30粒、スポーツ飲料20リットルなど、毎日約1万キロカロリー超の栄養を摂取。時間との戦いでもあるため、宗谷岬から函館までの約560キロは、32時間を仮眠10分で走りきった。平均睡眠時間は2時間半。平均時速24キロで走り抜き「後半は寝たかどうかも覚えてない」。ゴール直前の鹿児島・霧島市では転倒し、血だらけの状態で新記録を打ち立てた。

 小樽商科大卒業後、大手IT企業に就職。だが、永関さんは「作り手ではなく、出る手として感動を与えたくなった」と2年で退社し、「オダジョリギー」という芸名で、お笑いに挑戦したものの、花は開かずじまい。大学時代に軟式野球で全国大会出場の経験を持つ130キロ右腕は、四国独立リーグのトライアウトを目指したが、右肩を痛めて断念した。

 転機は昨年7月だった。自転車での日本縦断記録の存在を知った。「(自転車を)買うお金もなかったので」、1通のメールを自転車メーカーに宛てた。企画の意図などを熱心に訴えると、翌日にロードバイク2台の提供が決まった。「覚悟と行動が伴えば、1通のメールで、これだけの人生の変化量を作れる。くすぶっている人に刺激を与えられるはず」。熱意のある行動には多くの協賛社が付き、芽生えた野心が原動力となった。

 今後は20日開始の米国横断を手始めに、1年以内で、豪州、南米、アフリカ、ユーラシアの「世界5大陸最速走破」を目指す。米国横断は、北西部のポートランドからロサンゼルスへ向かい、ロッキー山脈を通過、ダラスなどを経由しニューヨークを目指す、約7200キロの長い道のりだ。

 「自転車歴1年の青年がやるから面白い。各地で東京五輪のプロモーションもしたい」。永関さんの肩書はチャレンジャー。無限大の夢に向かい、ペダルをこぎ続ける。(宮崎 亮太)

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