【有森裕子コラム】パラ種目「競技性」「平等性」でルール変更を

スポーツ報知
谷真海さん

 皆さんは佐藤真海、今は結婚して谷真海さんをご存じでしょうか。2013年にブエノスアイレスで行われたIOC総会で、20年大会を日本に招致するスピーチをしたパラリンピアンの女性です。

 彼女はこれまでの走り幅跳びから種目を変更し、トライアスロンで東京大会を目指していますが、先月、国際パラリンピック委員会は彼女が出場しているカテゴリーを採用しない決定をしました。今後は、障害の軽いクラスに出場する「クラス統合」を目指すことになりますが、現在のところ統合は認められていない状況です。

 これに対し、専門家はもちろん一般ファンからもさまざまな意見が出ていますが、気になるのは「東京大会開催の“貢献者”が出場できないのはおかしい!」と彼女に肩入れし過ぎたコメントが散見されることです。感情的には分からないでもないですが、「谷さんがかわいそうだから」になってはいけない。それは、彼女にとってもプラスにならないと思います。

 ただ、運営側が一方的にアスリートの「挑戦の機会」を奪うということも、また問題です。もちろん、決定にはさまざまな理由があると思いますが、その過程で運営側がアスリート側の意見に対し「聞く耳」を持っていたのか。同時に、アスリート側も団結して声を上げたのか。両者の話し合いが健常者のスポーツ以上に重要でしょう。

 パラスポーツというのは、ルールがどんどん変わっていってもいい、むしろ変わるべきものだと私は考えています。補助器具はどんどん発達していますし、カテゴリーの分け方も過去にとらわれる必要はありません。「競技性」と「平等性」のバランスを取って発展していってほしいと思います。

 今後どうなるかは分かりませんが、今回の問題がルールを考え直すきっかけとなって、「特例」ではなく「前例」として、谷さんが出場できるようになってほしいですね。(女子マラソン五輪メダリスト)

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