台風通過直後の地震「心の備えあっても体震えた」…札幌市北区で記者が感じた自然の脅威

スポーツ報知
食料品や生活用品を求め長蛇の行列ができた札幌市北区のスーパー

 北海道で6日午前3時8分ごろ、道南部の胆振(いぶり)地方中東部を震源とした震度7の地震があった。北海道での震度7は、震度階級が改定された1996年以来初めてで、国内で震度7以上を観測したのは2016年の熊本地震以来となった。札幌市北区の自宅で直面したスポーツ報知北海道支局の石井睦支局長(55)が、その恐怖を振り返った。

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 ただ、うろたえるしかなかった。最も眠りの深い時間帯。突然の大きな揺れに、ベッドから跳び起きようとした。だが、不意打ちに動転し、体が動かない。天井がきしみ、家具がガツガツとぶつかり合う。「家が倒れるかも」。蛍光灯のグローランプが消え、暗闇で息をのむ。ようやく揺れが収まり、携帯電話の小さな照明で部屋を見回すと、仏壇が倒れて香炉灰が吹雪の後のように広がっていた。

 状況を知りたいが、テレビは電源が入らない。外へ出てみると、近辺の信号も光を失っている。遠くの方で複数の救急車のサイレンが鳴り響いていた。震源地から約70キロ離れた札幌市北区で震度5強。災害用ラジオで深刻な事態を知り、体が震えた。

 台風が過ぎ去ったのは、つい数日前だった。強風で向かいの施設から吹き飛ばされた看板が自宅の塀を直撃。「ガラス窓でなくて良かった」。ホッとしたのもつかの間。再び真夜中の恐怖に襲われるとは思いも寄らなかった。自然の脅威とは、人間の予想を超えて特異なものだ。

 1993年7月、北海道・奥尻町で発生した北海道南西沖地震を取材した。揺れ、津波、火災。惨状を目にしぼう然と立ちつくした。2000年3月には、北海道・壮瞥(そうべつ)町の有珠山噴火を取材。噴煙で真っ白い取材ノートが黒く塗りつぶされた。東京本社勤務だった2011年3月には東日本大震災の取材も。自然災害に対する心の備えは十分にあったつもりだった。しかし、実際に直面すると冷静、迅速な対応はやはり難しい。

 当初は震度6強と発表されたが、後に震度7だったことが明らかになった。都市機能が停止し、日常は一変。しかし、一時の恐怖は過ぎ去っても、自然災害は我々をいたぶるように傷口を広げていく。早期の電力復旧はもちろん、これ以上、死者、負傷者が増えないことを祈るしかない。(石井 睦)

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