北海道胆振東部地震で全道停電 需給バランスが崩れ史上最大規模の295万戸 復旧に1週間以上

北海道で6日午前3時8分ごろ、道南部の胆振(いぶり)地方中東部を震源とした震度7の地震があった。北海道での震度7は、震度階級が改定された1996年以来初めてで、国内で震度7以上を観測したのは2016年の熊本地震以来となった。津波はなかったものの、厚真(あつま)町では大規模な土砂崩れが発生。被害は道全域に及び、午後4時現在、5人が死亡、安否不明31人、けが人は約300人。全域で長時間にわたる停電となった。
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北海道全土が闇に包まれた。地震の影響で約295万戸が停電。北海道電力によると、管内全域の停電は初めてという。午後になり一部地域で約34万戸が復旧したが、約261万戸で停電が続き、市民生活に深刻な影響が出ている。
政府や北海道電力によると、大規模な停電は道内の電力需要量の約半分を担う苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(厚真町)の停止が原因。電気は産業機器などに不具合が起こらないように、一定の周波数で生産する必要がある。貯蔵ができない電気は、需要(消費)と供給(発電)を常に同じに保ち、周波数を安定させているのだが、苫東厚真の停止により需給バランスが崩れた。
周波数を一定に保てない状態が続くと発電機の故障につながることもあり、ほかの火力発電所も次々と緊急停止。水力発電所を含む、全ての電源が停止した。
エネルギー政策が専門の高橋洋都留文科大教授は「原発や大規模火力発電所を集めると、災害などによる停電リスクが高まる」と指摘。小規模分散型電源へと動く世界的な流れにも乗り遅れていると手厳しい。
この日は、道内の水力発電所を運転させ、砂川火力発電所(砂川市)を再稼働させた。ほかの火力発電所も順次再起動する方針だが、苫東厚真は蒸気漏れや出火が確認されたことから、復旧には少なくとも1週間以上かかる見通しという。道内と本州を結ぶケーブルを通じて電力融通を行う予定。道内には泊原発(泊村)があるが2012年5月以降、運転を停止している。
これらの対応により290万キロワットを確保するが、5日の管内のピーク時需要量は380万キロワット。完全にカバーはできず、全域の電力復旧には苫東厚真の稼働を待つ形となる見込みだ。
◆過去の大規模停電 2006年8月、東京の旧江戸川でクレーン船が送電線を損傷させた際、需給バランスが崩れて品川火力発電所(最大出力114万キロワット)が自動停止。合計約139万軒が停電した。東京電力管内で最大の火力発電所は鹿島火力発電所(茨城県神栖市)で566万キロワット。約295万戸の停電戸数は、1995年の阪神大震災の約260万戸を超える史上最大規模。
◆電気の周波数 周波数は東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツ。静岡県の富士川などが境目となっている。供給量が上回ると周波数は上昇し、需要量が上回ると周波数は低下する。