人生ゲームは時代を映す鏡点初代発売から50周年、全62種1500万個以上販売

スポーツ報知
発売50周年を記念して発売された「人生ゲームタイムスリップ」を前にするタカラトミーの池田源さん

 家族や友人らと楽しむボードゲームの定番として知られる「人生ゲーム」が1968年の初代発売から今年、50周年を迎えた。年齢に関係なく誰でもプレーすることができ、下位からの一発逆転も狙える双六(すごろく)タイプのゲームは米国が“発祥の地”だが、時代とともに日本で独自の発展を続け、これまでに全62種、合計1500万個以上を販売している。ゲームの歴史や世代を問わず愛される理由について、現在「人生ゲーム」のブランドプロデューサーを務めるタカラトミーのゲーム事業部・池田源さんに聞いた。(高柳 哲人)

 日本に古くからある双六と異なり、最初にゴールした人が必ずしも1位にならない、サイコロではなくルーレットを使って駒を進める、ドル紙幣をやり取りする―。50年前に初代が発売された当時、「初めてづくし」の内容にユーザーは驚き、そして飛びついた。米国から“輸入”されてきた「THE GAME OF LIFE」=「人生ゲーム」は画期的なボードゲームだった。

 「箱を見ると『アメリカンゲーム』という文字があるとおり、初代と2代目(80年発売)は、米国の盤面をほぼそのまま和訳しただけでした」と池田さんは説明する。「だから、当時の日本にはなじみのないマスもありました。『ロールス・ロイスを買う』とか『ラスベガスのカジノでもうける』などです。今でこそ誰もがラスベガスを知っていますが、半世紀前にはピンと来なかったのではないでしょうか」。だが、それが逆に「カッコイイ」と捉えられ、当時のクリスマスに「子供が最もおねだりするゲーム」となった。

 「モデルチェンジ」があったのが、83年発売の3代目。この時から、マスがオリジナルの内容になった。ちなみに、日本以外で独自のマスで製作されている国はないという。「新製品を出す時は権利を持つ米ハズブロ社に最終確認を取りますが、基本的には任せられています」。人生ゲームが“米国産”であることを聞かされると「えっ? 日本のゲームじゃないの」と驚く人も多いという。

 それだけ人生ゲームが日本に根づいたのは、国民性にあるのでは…と池田さんはみている。同じようにドルをやりとりして競うボードゲームに「モノポリー」があるが、日本では圧倒的に人生ゲームが主流だ。

 「モノポリーは『とにかく金を稼ぐ』というイメージで戦略性、駆け引きが必要。勝ち負けにこだわる米国などには合っているのだと思います。一方、人生ゲームは運の要素が強く、家族や仲間とワイワイしながらプレーするもの。コミュニケーションを大切にする日本人向けなのではないでしょうか」。確かに、「子供生まれ過ぎ」とか「借金まみれだな」などと相手にツッコミを入れた経験は誰しもあるだろう。

 7月に「50周年記念」として発売された「週刊少年ジャンプ人生ゲーム」まで50年の間に発売されたのは全62種。これらは大きく2つに分けられる。一つは7~8年ごとに一度リニューアルされる「スタンダード版」で、最新は2016年発売の7代目。もう一つは、その時々のトレンドが色濃く表れている、関係者が「テーマライン」と呼んでいるものだ。

 「スタンダード版ももちろん、時代に即してマスの内容は変えていきますが、新しいものを入れ過ぎないように、長く遊べるようにしています。逆に、テーマラインは『その時、何が流行していたのか』がハッキリ分かるものにしています」。例えば、15年発売の「人生ゲームオブザイヤー3」では、マスに「ドローン」や「結果にコミット(RIZAP)」などが登場している。

 その一方で、「お約束」はきちんと踏襲している。「やりとりするドル紙幣は、実は初代からデザインが変わっていません。車にピンを刺して家族の人数を示すシステムや、ルーレットで進めるというのも同じですね」。ちなみに、08年にはドル紙幣をキャッシュカード化し、ルーレットも電動化した「人生ゲームICルーレット」が発売されたが「不人気でしたね(笑い)」。鳴り物入りで導入したはずが「失敗作」となってしまったという。

 スマートフォンのアプリやゲームの浸透により、最近は「ボードを広げて…」という光景は少なくなってきたことは間違いない。それでも池田さんは「小さい子供は親御さんと一緒に遊ぶことで、お金の大切さやお釣りの概念、『保険って何?』などといったことを学べると思うんです」と強調する。「何より、人生ゲームは『時代を映す鏡』。大人になってプレーしなくなった人も、実家に帰った時に押し入れの奥から人生ゲームを出して『当時はこんなだったな…』と遊んでもらえたらうれしいですね」

 ◆初代王者に柴崎和美さん!人生ゲーム日本一決定戦115人が参加

 9月22日、50周年を記念して初の全国大会となる「人生ゲーム日本一決定戦」が東京・秋葉原で開催され、115人が初代チャンピオンの座を争った。

 決勝に勝ち上がった4人は、なんと全員が女性。うち2人は小学生だった。多くのギャラリーが見守る中、優勝したのは埼玉県草加市の主婦・柴崎和美さん(48)。小学5年の娘に同伴して来場したが、当日枠に空きがあることを聞いて飛び入り参加。そのまま、頂点に駆け上がった。

 とはいえ、家族で人生ゲームをプレーした時は“常勝”ということはなく、子供たちに完敗することもあるという。「『家など、買えるものはなるべく購入する』という作戦はありますが、基本的には運が重要なんだと思います。その意味では、人生で今日が一番ラッキーだったかもしれません」と笑顔を見せていた。

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