安田純平さん、３年４か月監禁生活支えたスラムダンク魂？「安西先生」名言「あきらめたら試合終了」

　２０１５年６月にシリアで武装勢力に拘束され、先月に解放されたフリージャーナリスト・安田純平さん（４４）が２日、帰国後初めての記者会見を都内の日本記者クラブで行った。冒頭におわびと感謝を述べ、シリア入国や拘束された経緯、３年４か月の監禁生活などを赤裸々に振り返った。拷問体験と抗議のためにハンガーストライキを実行したことも明かした。一部で「自己責任論」をめぐってバッシングを受けているが「自業自得で批判は当然」と明言。「あきらめたら試合終了」の直筆サインを披露して２時間４０分の会見を終えた。

　伸び放題だったヒゲを整え、２時間以上にわたって監禁生活を語った安田さんは、手書きのメッセージを披露し、会見を締めた。

　「あきらめたら試合終了」。

　バスケ漫画「スラムダンク」の名文句「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」になぞらえたと思われる言葉。「いつかは帰れるんだと、ずっと考え続けていました」と厳しい顔つきで３年４か月の苦難を総括した。

　カメラ約８０台、記者３８０人以上が詰め掛けた注目の会見。拘束されたきっかけは、本人いわく「凡ミス」だった。１５年６月２２日。トルコからシリアに入国する際、国境で同行者が不在だった間に通りかかった別の２人組に付いていき、そのまま武装勢力に拘束された。当初は政府への金銭目的の人質だったため「ゲスト扱い」で保護。「テレビも見られた。衛星放送でＮＨＫ　ＷＯＲＬＤとか見ていた」。食事もデザート付きで、「もうすぐ帰れるぞ」と何度も言われた。だが、次第に「武装勢力側と日本政府との交渉が途絶え」解放は遠のいた。

　１６年７月からは、別の捕虜収容所に。欧州人など「１００人単位の囚人」がいる巨大施設で行われたのは、拷問だった。「幅１メートル、長さ２メートルの部屋で、少しでも身動きして音を立てると『話を盗み聞きしている』と拷問を受けた」。水浴びも禁止、指の関節の音を鳴らすだけで電気や扇風機を消された。

　期間は計４か月以上。絶望感から何度もキレた。「ドアを蹴り上げ『そんなに聞かせたくないなら鼓膜を破って耳をつぶしてくれ』と言いました。家族と話せなくなっても俺は帰りたいんだと」。礼拝で体を動かすためだけにイスラム教へ改宗。２０日にわたるハンストを決行し「骨と皮だけになった」という。

　１８年３月には別の場所に移されるも、同９月下旬には元の収容施設へ逆戻り。同じ部屋に入れられ、再び拷問が始まった。「もう泣きついて、拘束から４０か月目をメドに帰してくれと言ったんです。これ以上やるなら殺すか帰してくれと」。祈りが通じたのか、４０か月目にあたる１０月２２日、突然解放された。

　帰国から８日。今後の紛争地取材は「白紙」とした一方で「両親が高齢で、親孝行しなきゃいけないんじゃないかと感じている」と正直な心境を吐露。

　「可能な限り説明するのが私の責任」と、会見終了後はテレビ各局に出演。拘束時の様子を繰り返し語った。（樋口　智城）

　◆「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」　漫画家・井上雄彦氏の代表作「スラムダンク」に登場する名ぜりふ。主人公・桜木花道のチームメート・三井寿が中学時代に勝利を諦めかけた時に、後に入学する湘北高校のバスケット部顧問・安西先生から掛けられた言葉で、奮起した三井は優勝を手にする。“座右の銘”としているスポーツ選手も多く、巨人の内海哲也投手が好きな言葉として挙げたことがある。