「ねじれ」トランプ大統領 下院で民主党に敗北

スポーツ報知

 米中間選挙は6日投開票が行われ、トランプ大統領(72)と対立する野党民主党が下院で8年ぶりに多数派を奪還した。

 上院は共和党が多数派を維持した。トランプ氏はツイッターに「今夜、とんでもない成功を果たした。皆さん、ありがとう!」と勝利宣言。ただ、上院・下院の「ねじれ」で政局の混乱は避けられず、「米国第一主義」に黄色信号がともった。通商政策では日本と中国に貿易不均衡の是正などを迫る可能性があり、予断を許さない状況が続きそうだ。

 民主党の下院選勝利はトランプ政権に対する国民の反感の高まりが要因とみられる。民主党は世論の後押しを受け「ロシア疑惑」を議会で追及し、トランプ氏の弾劾手続きに向けた動きが出る可能性がある。中間選挙は大統領の政策に国民が評価を示す場と位置付けられるため、与党に厳しい結果が出ることが多い。民主党下院トップのペロシ院内総務は「われわれの国のための勝利だ」と述べた。

 「ねじれ」により民主党、共和党が対中、対日外交貿易政策で共闘する芽も出てきた。トランプ氏は選挙戦で中間層への所得税減税を打ち出したが、下院で敗れたため、新減税案は頓挫する公算が大きい。そのため、大統領に権限が与えられる通商政策や不公正貿易是正にカジを切るとみられる。民主党も輸出増や雇用増につながる取り組みは支持しているため、米国が日本と中国を照準に定め、貿易不均衡の是正を迫る可能性が高い。

 最大の懸念は中国に対して仕掛けた「貿易戦争」の行方だ。知的財産権侵害を理由に中国製品2500億ドル(約28兆円)分に制裁関税を課し、輸入品すべての対象を拡大すると脅している。

 日本に対しても、トランプ氏は選挙戦で「日本はたくさんもうけてきたが、そろそろ釣り合いを取らなければならない」と強調。今回の敗北で「打撃」を受けたトランプ氏が強硬化する可能性がある。来年1月には日本が物品貿易協定(TAG)と名付けた新たな通商交渉の協議を控えているが、物品の関税に限定したい日本側に対し、米国が郵便や金融で規制見直しを求めてくる展開を日本政府は警戒している。

 西村康稔官房副長官は7日の記者会見で「わが国として国益に反するような合意を行うつもりはない」と訴えたが、2年後に大統領選を控えるトランプ氏が「成果を上げようと強い態度に出る」(政府関係者)との観測は消えない。

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