新直木賞作家の真藤さん「会見後、ジャージが6着も送られてきて『すげえな直木賞』と」…芥川賞・直木賞贈呈式

スポーツ報知
贈呈式に出席した(左から)直木賞受賞の真藤順丈さん、芥川賞受賞の町屋良平さん、上田岳弘さん

 第160回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の贈呈式が21日、都内ホテルで開かれ、芥川賞の上田岳弘さん(39)と町屋良平さん(35)、直木賞の真藤順丈(しんどう・じゅんじょう)さん(41)に正賞の懐中時計、副賞の100万円が贈られた。

 「ニムロッド」(群像12月号)で受賞した上田さんは「来週、誕生日なのでそれはそれでお祝いを頂いても構いません」と笑わせつつ「明日死ぬかもしれませんけど、寿命を考えたら40~50年くらい生きるかと思います。流されることに反抗するのが作家。50年後、どういったことが起きるのだろうとワクワクしている自分もいます」と語った。

 「1R1分34秒」(新潮11月号)で賞を射止めた町屋さんは、作品に最後に入れた文章として「ただ何かを続けていることがこんなにも傲慢なこととは思わなかった」との一文を紹介しながら「何かを続けていく傲慢さと向き合って、これからも頑張って参ります」と宣言した。

 「宝島」(講談社)での受賞となった真藤さんは、受賞決定会見でのジャージー姿が話題になったが「今日はジャージーではなくスーツで参りました。直木賞のすごみを感じたのは、会見後にジャージーが6着も送られて来たことです。『すげえな直木賞』と思いました」。影響の大きさを語りながら、「惰眠を貪り、果報を待つ日々にはサヨナラを告げて、フェンスを越えて小説をつかみ取るような作家になりたいです」と語った。

 芥川賞選考委員の吉田修一さん(50)は「上田さんの作品で驚かされたのは作家としての脚力。素晴らしい作家と出会えました。100点満点。まあ、100点満点というのがクセ者と言えばクセ者なんですけど。町屋さんは、たどたどしい言葉が並ぶと瑞々しくなるという不思議な文章を書かれる方。町屋さんにしか見えない景色を一作一作、丁寧に書いていくことを期待します」と祝辞を述べた。

 直木賞選考委員の桐野夏生さん(67)は「真藤さんの作品は最初の投票から抜きん出ていた。軽妙ながらもパワフルで饒舌なトーンは誰にも真似が出来ないと思います」と賛辞を送っていた。

 ◆「ニムロッド」 仮想通貨をネットで「採掘」する「僕」中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折、主人公に「だめな飛行機コレクション」をメールで送り続ける同僚・ニムロッドこと荷室仁。3人の人間模様を交えながら、あらゆるものが情報化する社会での生き方や人間の終末を暗示する新時代の仮想通貨小説。

 ◆「1R1分34秒」 21歳でプロボクサーの「ぼく」はデビュー戦こそ華麗なKOで飾ったが、その後は2敗1分け。当たったかもしれない一発のパンチ、あれをしておけば勝てたんじゃないかという練習…考えすぎてばかりいる。ちょっとおかしな日常の中で出会った変わり者トレーナー「ウメキチ」との日々が肉体を、世界を変えていく。

 ◆「宝島」 米軍から様々な物資を略奪する「戦果アギヤー」の英雄・オンちゃんが嘉手納基地襲撃に失敗して行方不明に。残された親友グスク、オンちゃんの弟・レイ、恋人・ヤマコの3人は、それぞれの道を歩みながら本土復帰へ向かう時代とともに沖縄を生き抜く。

社会