【eスポーツ】「シャドウバース」王者・ふぇぐ、日本人初の1大会賞金1億円超え

スポーツ報知
パソコンで練習しているふぇぐ。「世界大会はパソコンなので、同じ環境にしてます」

 デジタルカードゲーム「Shadowverse(シャドウバース)」の世界チャンピオンとなり、賞金100万ドル(約1億1000万円)を稼いだ日本人がいる。17年にプロになったばかりの「ふぇぐ」(24)だ。注目を浴びるeスポーツ界のシンデレラボーイが、シャドバの魅力を語った。(増田 寛)

  昨年12月、日本で行われたeスポーツ世界大会「Shadowverse:World Grand Prix(シャドウバース:ワールドグランプリ) 2018」は優勝賞金1100万ドルに設定され大きな話題となった。15、16日の決勝大会には6か国、24人が進出。そこで勝ったのは、弱冠24歳、17年6月にプロになったばかりの超新星「ふぇぐ」だ。初日の予選リーグで8強に入り、最終日の決勝トーナメントで3連勝し頂点に立った。

 プロの収入は賞金のほか、所属チームからの給料、イベント出演料、スポンサー契約など。最近は年収が1億円を超える選手も出てきたが、一大会での“億超え”は日本人初だ。

 「やっぱり夢があります。僕らより上の世代の方だと、どうしてもゲームというイメージ。賞金はゲームをeスポーツにしてくれる懸け橋。僕みたいに1億円のおかげでこの取材もあるので」

 eスポーツと言えば、格闘ゲームやサッカーゲームなど“動”なイメージが強いが、「Shadowverse」(以下シャドバ)はスマートフォンやパソコンで行うデジタルカードゲーム。将棋や囲碁のような頭脳戦で、“静”競技だ。

 「僕は格闘ゲームとか反射神経を使うようなものは全然できないです(笑い)。カードゲームはずっと好きで、紙のカードは小学校1年生くらいからやってました。シャドバは大学の先輩に勧められて始めました」

 シャドバは日本で最も成功しているデジタルカードゲームの一つ。2016年にサービス開始し、昨年2000万ダウンロードを突破した。

 「カードのイラストがきれいなのがいいですね。あと、対戦相手がすぐ見つかること。紙のカードだと、目の前に対戦相手がいないとできない。でも、シャドバはネット対戦だから対戦相手に困ることがないです」

 eスポーツの格闘ゲームでは反射神経や視力の問題で、選手生命が短く、30歳が限界とまで言われている。だが、同作に必要なのは運動神経ではなく、カードゲームならではの読み合いと心理戦。年齢は関係ない。

 「どのタイミングでも入りは一緒ですね。ある程度年齢がいってからでも、上を目指せる。どの年代からでも上を目指せるというのはものすごい魅力です」

 競技歴が極端に少なくても、努力次第で世界に羽ばたける。ふぇぐはプロになっても、そこからなかなか勝てず、12月の世界大会の日本代表には最後の最後に滑り込んだ。それでも練習を欠かさず、実直な努力を重ね、栄冠を手にした。

 「僕の練習量はどのプレーヤーよりも多いです。世界大会前は12時間やってました。練習次第で上に行ける。もっと練習すればもっと上に行けます。eスポーツの努力は裏切りません」

 追われる立場となったことで新たな目標もできた。

 「5年後や10年後、僕に憧れてプロになりましたという人が出てくるようになってほしいです」

 1億円を手にした時、新幹線の車内ニュースでも優勝の知らせが流れ、一躍シンデレラボーイとなったが、思い描くeスポーツ界の今後は意外な考えだ。

 「皆さんが思うスポーツとは少し違いますから、eスポーツを『スポーツのジャンル』として見るのではなく、『eスポーツというジャンル』として見てほしいです」

◆昨年2000万DL

 Shadowverse(シャドウバース)は、Cygamesより配信されている対戦型オンライントレーディングカードゲーム。「シャドバ」と略されることが多い。2016年6月17日からサービスが開始された。プロデューサーは木村唯人、主な開発者は宮下尚之。昨年10月には同作のダウンロード数が2000万を突破した。基本プレイは無料。現在、カード種類は1000種類を超え、約3か月に1回の周期で新しい種類のカードが随時追加される。

 ネット対戦なので、カードゲーム特有の「やりたくても対戦相手がいない」という状態がない。基本はそれぞれが用意した40枚のデッキを用い、別のプレーヤーと1対1で対戦する。シャドウバースの特徴的なシステムとして「進化」がある。場のカードの能力を上げることができる。進化を使うタイミングが勝利するために重要となる。

 ◆対戦の流れ    

〈1〉手札は3枚。初めのターンは先攻は1枚、後攻は2枚カードを引く

〈2〉場にカードを出す。進化させればカードが強くなる

〈3〉相手からの攻撃を防ぎつつ攻撃。敵の持ち点を削るように立ち回る

〈4〉相手の持ち点20点を全て削ったら勝利!

 ◆ふぇぐ (本名非公表)1994年5月27日、東京出身の24歳。eスポーツチーム「よしもとLibalent」に所属。「Shadowverse」の競技歴は約3年。主な戦績として、「ファミ通CUP 2017」「JCG WGP予選 2018」優勝。「Shadowverse:World Grand Prix 2018」で優勝し、1億円を獲得した。

 【2018年の主な大会の賞金と優勝者】

 ◆国際大会

 ▼ゴルフ・マスターズ 2億988万円 パトリック・リード(28)=米国=

 ▼テニス・ウィンブルドン 3億3000万円 ノバク・ジョコビッチ(31)=セルビア=、アンゲリク・ケルバー(31)=ドイツ=

 ▼サッカー・欧州CL 5億1600万円 レアル・マドリード(スペイン)

 ◆国内大会

 ▼競輪・KEIRINグランプリ 9660万円 三谷竜生(31)

 ▼競馬・有馬記念 3億円 ブラストワンピース

 ▼将棋・竜王戦 4320万円 広瀬章人(32)

 ▼囲碁・棋聖戦 4500万円 井山裕太(29)

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