東日本震災の「語り部」育成事業スタート…20年夏、双葉町にアーカイブ施設オープン

スポーツ報知
福島県の語り部育成事業に参加した福田彰さん

 2020年夏、双葉町に「東日本大震災・原子力災害アーカイブ拠点施設」をオープンさせる予定の福島県は、同施設内で震災の様子を後世に伝える「語り部」を育成する事業を、今年度からスタートさせた。昨年7~12月の間に4回にわたり、福島第1原発から約10キロ離れた富岡町などで現場演習や口演原稿の作り方、アナウンサーによる話し方講座、実演などを行った。

 相馬市の自営業・福田彰さん(62)は、これまでにも津波の犠牲になった消防団員をテーマにした楽曲「3・11の星たち」を作詞作曲し公表していた。「更に何かできるかもしれない」と考え、事業に参加した。「良かったのは、他の人の経験を知ることができたこと。100人の被災者がいたら、100通りの経験がある。一つでも多くの経験を知ることで、語り部としての厚みが増す」

 語り部のスタイルは個人に任せられている。福田さんは「自分で作った曲とトークを合わせ、30~40分くらいで震災を語ることができたら」と考えている。「音楽の持つ力は理解しているつもり。それと『震災後』という言葉は使わない。原発の問題が収束していない以上、私は『震災中』という意識を持っている。それを語っていきたい」とした。

 県によると、今年度の事業に参加したのは16人。募集人員は30人なので、大幅な“定員割れ”だ。事業は来年度も実施予定だが、県は「時期なども含め、もっと参加しやすい方法を考えたい」という。一方、福田さんは「人前で話すことに慣れている演劇部などに所属する地元の大学生など、『参加してくれそうな人』を狙って呼び掛けることも必要では」と話した。

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