5つ目の元号を迎える“歴史の生き証人”世界最高齢116歳田中カ子さん、願うのは「みんなが幸せな時代」

スポーツ報知
炭酸飲料とチョコレートが好物という田中さん

 今月9日にギネスワールドレコーズ社に「存命中の世界最高齢」と認定された、福岡市東区の老人ホームで生活する116歳の田中カ子(かね)さんは、明治36(1903)年生まれ。5月1日からは明治、大正、昭和、平成に続き、5つ目の元号を生きることになる。このほど、スポーツ報知の取材に応じ、「まだまだ、死ぬ気がせん」と笑った田中さんは新時代に何を求め、また何を楽しみにしているのだろうか。(高柳 哲人)

 誕生した1903年は、「飛行機の父」ライト兄弟が初めて動力飛行に成功。首相は桂太郎(第1次)が務めていたという、まさに「歴史の生き証人」ともいえる田中さん。激動の日本を生き続けて来た中、5月には5つ目の元号を迎えることになる。

 現在も歩行器の力を借りてではあるが自分の足で歩き、食欲も旺盛。“勉強会”として、頭の体操のために毎週行っている計算テストも毎回満点で、オセロを趣味とする田中さんに「新時代に願うことは?」と聞くと、真っ先に返って来たのは「みんなが幸せな時代。それがいいですね」。その言葉には、自身の経験が詰まっている。

 1922(大正11)年に19歳で結婚した田中さんは2男2女をもうけたが、2人の女の子は早世。長男は太平洋戦争終戦後にシベリアに2年以上抑留された後に帰国した。長寿となったことで先に亡くなった親族が多く、現在は老人ホームで生活するが、家族をはじめとした周囲の人間が何よりも大切だという考えは、今も変わっていない。「みんなと楽しく過ごせて、おいしいご飯を食べていれば、死ぬ気はせんわな~」と笑った。

 歌を詠むのが趣味だった田中さんが、数年前に作った作品がある。「平成の 豊かなみ代(御代=天皇の治世)まで 生きのびて 残る命を いかに生きんと」。戦時中を生き抜き、終戦後からの昭和、そして平成という平和で豊かな時代を過ごしてきたからの思いを込めた歌だ。また昨年、老人ホームのスタッフが結婚した際に田中さんが筆を持ち、色紙にしたためた言葉は「幸福」だった。

 そんな田中さんが、新時代に楽しみにしていることがある。それは、来夏に開催される東京五輪・パラリンピックだ。1998年の長野冬季五輪が閉会を迎えた時には「神々の 山の眠りに 聖火消ゆ」と詠んでいたほど、田中さんは五輪観戦に興味を持っていたという。

 最近はニュースなどをほとんど見ないため、注目選手など詳細はよく知らないそうだが「オリンピック、楽しみだね~」。ちなみに、田中さんが生まれた1903年は、米セントルイスで開催された第3回大会の前年。日本人が初めて参加し、現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」で舞台となっているストックホルム大会は、9歳の時となる。

 1月4日にホーム内で行われた誕生会(誕生日は1月2日)では、周囲が「危ないから」と止めるのを振り切って立ち上がり、「これからもお世話になりますけん、よろしくお願い致します」と深々と頭を下げた田中さん。「一日一日を大切にして、その積み重ねで生きてきたら、116年過ぎてたね」。新時代も毎日を新鮮な気持ちで楽しみ、生きていくつもりだ。

 ◆田中 カ子(たなか・かね)1903年1月2日、福岡県糟屋郡和白村(現在の福岡市東区)生まれ。116歳。親族によると孫5人、ひ孫が8人いる。22年、19歳で結婚。40年、博多海軍航空隊内で夫と共にうどん店を出す。52年、キリスト教に入信。70年、生花店を開く。2005年、現在生活する老人ホームに入居。06年、大腸がんの手術を受ける。好きな食べ物はチョコレート、好きな飲み物は炭酸飲料。趣味はオセロ。

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