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地方にとって「線路は血管、鉄道は血液」鉄道なくして街は栄えない

2018年4月27日16時9分  スポーツ報知

 3月31日をもって、広島県三次市と島根県江津市を結ぶJR三江(さんこう)線が廃止となった。当日に至るまでにテレビをはじめ、各メディアで大々的に沿線の様子が報じられたのは、ホームと待合室が地上20メートルの高さにあることから、「天空の駅」とも称された宇都井(うづい)駅の存在や、江の川沿いを走る自然の豊かな風景が映えたからと思われる。

 最後の列車は各地から鉄道ファンが駆け付けたことから、通常1両での運行を3両に増やしてもすし詰めだったようだが、「乗り鉄」をかじっている私も、廃線前に全線乗車をしてきた。“道連れ”に地元客はほとんどおらず、私も含めてほとんどが「記念乗車組」だ。

 そんな中、車中で出会った沿線に住む老夫婦の夫人は「最後だと思って。記念だから」と話した後「よく、鉄道ファンの方は『何で廃止するんだ』と反対するけど、仕方ないわよね。普段は乗る人がいないんだから」とあきらめに近い様子だった。だが、私の心に残ったのは、彼女がその後に続けた「でも、これから家の近所のことが心配だわ」という不安。その言葉を聞いて思い出したのは、取材で訪れた被災地のことだった。

 私は、現地を訪問した際には、鉄道インフラに着目することにしている。昨年、熊本地震から1年の取材では南阿蘇鉄道の現状を目の当たりにし、東日本大震災の発生から6年を迎えた今年は、岩手県大槌町で山田線の今年度末からの再開(三陸鉄道リアス線として運行)に期待する声を聞いた。そこで感じ取ったのは「線路は土地にとっての血管であり、鉄道は血液である」ということだった。

 車社会である地方にとって、鉄道利用者の中心は車の免許を持っていない子供や生徒、高齢者ら。その世代の人たちが使うことのできる移動手段が奪われることは「その場所に住むな」と言われているようなもの。もちろん、鉄道が廃止されてもバス路線などで代替されることもあるが、鉄道がなくなることは、沿線から住民が消えることを意味する。東日本大震災で大きな被害を受けながら、3年で全線復旧にこぎつけた三陸鉄道の前社長、望月正彦さんも「鉄道が無くなって栄えた街はない」と話し、「鉄道から始まる街作り」を推し進めていた。

 大槌町は震災前に人口が約1万6000人だったが、現在は約1万2000人。6年で4分の3となってしまった。更なる減少を防ぐためにも、地元の鉄道にかける期待は大きい。また、南阿蘇鉄道も今年3月3日、ようやく全線復旧に向けた工事が始まった。今後、どのような取り組みをし、地元を盛り上げていくのか。注目を続けていきたいと思っている。(記者コラム・高柳 哲人)

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