【佐藤優コラム】プーチン氏とトランプ氏はケミストリー合う

2018年7月23日12時0分  スポーツ報知

 ケミストリーの本来の意味は、化学反応であるが、この言葉は外交においてもよく用いられる。日本語に訳すと相性のような意味だ。

 16日、フィンランドの首都ヘルシンキで、米ロ首脳会談が行われた。会談後、プーチン・ロシア大統領とトランプ米大統領が共同記者会見を行った。筆者は、共同記者会見の実況中継を国営「ロシアテレビ」のウェブ放送で見たが、両首脳のケミストリーが合うことが伝わってきた。最初、プーチン氏が、会談内容を総括し、それに対する追加説明をトランプ氏が行うというスタイルの会見で、両首脳の連携がよく取れていた。プーチン氏の主張は理路整然としていて、おおむね以下のことを述べた。「ロシアは、2016年の大統領選挙を含め、米国の内政に干渉したことはないし、干渉する意図もない。選挙干渉の容疑で12人のロシア諜報(ちょうほう)機関員を米連邦大陪審が起訴した問題については、米ロ間には司法共助協定があるので、それに従って米国がロシアに公式の照会を行えばよい。そうすれば、ロシアの検察が、法に従って対処する。私は諜報機関で働いた経験がある。それだから、諜報機関がどのような報告書を作成するかについて熟知している。16年米大統領選挙へのロシアの干渉問題については、諜報機関の工作活動の枠組みで処理するのではなく、司法の枠組みで処理すべきだ」

 プーチン氏の説明にトランプ氏は理解を示した。感情的反応や諜報機関の工作活動を排除して、事態を沈静化しようとする両首脳の姿勢は肯定的に評価されるべきと思う。米国に戻った後、トランプ氏は、記者会見で「ロシアが選挙に干渉する理由がない」と述べたが、これは言い間違えで、「not」を落としてしまったので、自分の真意は「ロシアが選挙に干渉しない理由がない」と釈明した。ロシアでは、共同記者会見における発言がトランプ氏の本音で、米国に帰ってからの前言撤回は、内政的配慮からなされたものとみられている。ロシアでは政治エリートもマスメディアも、トランプ氏に対して好意的だ。(作家・元外務省主任分析官)

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