【有森裕子コラム】今のままの災害対策では東京五輪は危険

2018年8月6日12時0分  スポーツ報知
  • 2020年東京五輪のマラソンコースを説明する室伏広治氏(左)と高橋尚子氏

 広島県や私の故郷でもある岡山県に多大な被害をもたらした西日本豪雨から、1か月がたちました。自衛隊やボランティアの方々の協力も得て、復旧が進んでいる中、個人的な感覚なのかもしれませんが、過去の災害と比較すると重大さや深刻さが被災地以外の地域に伝わってくるのが緩やかな気がしています。

 日本全体を覆う酷暑についての報道が、優先順位の上にきているからかもしれません。また、あってはならないことではありますが、災害の中心が東京から離れていることによる「距離による温度差」というのも考えられるでしょう。ただ、「想定外」「未曽有の災害」ということを理由にして、被害の原因分析や対策を講じることに関して危機感が足りないのも原因だと思うのです。

 なぜ「想定外」になってしまったのか。過去に起きた「未曽有の災害」で何かを学び、経験や教訓を生かして国や自治体の備えはきちんとできていたのか。命に対する危機感を持っていたかどうかといえば、正直、疑問を感じざるを得ません。

 そして、今の考え方のままでは、気象庁が「災害」と呼んだ暑さの中で2年後に東京五輪・パラリンピックを開催するのは、非常に危険でしょう。先日、マラソンのスタート時間を30分繰り上げ、午前7時とすることが決まりましたが、正直言ってこの30分が効果を生むとは考えにくい。より多くの想定をする中で、「最悪」の軽減を考える必要があるのではないでしょうか。

 アスリートは危機感を持ったら、棄権をするということで「逃げる」ことはできます。でも、選手よりもはるかに人数の多い観客の人たちはどうなのか。応援場所から「逃げる」ことを、すべて自己責任としてはいけないのでは。「未曽有の暑さ」に対した準備をきちんとすると同時に、この危機感を国際オリンピック委員会(IOC)をはじめとした関連各所にまめに伝え、判断に柔軟性を持たせなければならないと思います。(女子マラソン五輪メダリスト)

有森裕子
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