【報知映画賞】長編2作目で作品賞受賞の岸監督 305分作品に「無謀なことをしてしまった」

2017年11月29日7時5分  スポーツ報知
  • 偉大な作品と肩を並べ、ガッツポーズする岸善幸監督

 映画賞レースのトップを飾る「第42回報知映画賞」の各賞が28日、発表された。作品賞・邦画部門は「あゝ、荒野」(岸善幸監督)が受賞した。

 「まさか。青天の霹靂」。長編映画2作目での作品賞受賞に岸善幸監督(53)はただでさえ大きい目をさらに見開いた。「過去の受賞作品を見ると、こんな作品に並べるんだ。作品というよりも監督の僕の名前が出ていることがありがたい」と感無量だ。

 「学生時代に読んでいた」と言う、寺山修司の同名小説が原作。自分を捨てた母親を憎む新次(菅田将暉)と吃音(きつおん)と赤面対人恐怖症に悩む建二(ヤン・イクチュン)の2人のプロボクサーの物語だ。「若い世代に見て欲しかった。寺山さんがかつて若い人のカリスマだったってことと、50年前の小説をよみがえらせた時に古くさい話しと片付けられたくない」という考えのもと、テンポを上げるように意識した。2021年の東京・新宿を舞台に、若者の「僕は、ここにいるよ」という孤独な叫び、「自殺抑止研究会」、徴兵制を盛り込んだ「社会奉仕プログラム」やテロなどを通して身近な人を亡くす痛みも描いた。

 学生時代の夢は映画監督かジャーナリスト。しかし、就職活動でいい結果が出せず、友人のすすめで大手製作会社の「テレビマンユニオン」へ入社。「アメリカ横断ウルトラクイズ」「情熱大陸」などを手掛け、キャリアを積んで50代にして映画監督の夢をかなえた。「世界に起きている紛争や暴力は日本だけ置き去りにされている気がする。テロでケガをした、家族を亡くしたという痛みは遠い世界のことのよう」と思いをはせ、「そういう世界があるって想像してもらいたかった」と熱を込めた。

 120分前後の映画が多い中、本作は前後編合わせて305分と挑戦的な大長編となった。「無謀なことをしてしまって(自分は)映画は2本で終わるかなって思っていました」と率直な思いを明かすも、「前後編で作品賞をもらえて肩の荷が下りました」。岸監督の映画人生のゴングはまだ鳴ったばかりだ。(水野 佑紀)

 ◆岸 善幸(きし・よしゆき)1964年3月26日、山形県生まれ。53歳。87年よりテレビマンユニオンに参加。ドラマ「開拓者たち」「ラジオ」などを手掛けた。16年、長編監督映画デビュー作「二重生活」で第14回ウラジオストク国際映画祭最優秀監督賞を受賞。

孤狼の血特集
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