第1回受賞者(1999年) 巨人・松井秀喜

第1回受賞者(1999年) 巨人・松井秀喜
 “球場外のMVP”を小渕首相も、世界のキタノも、ONも祝福した。日本のプロ野球人の社会貢献活動を表彰する「ゴールデンスピリット賞」の表彰式が8日、東京・虎ノ門のホテルオークラで行われた。報知新聞社のスポーツ紙発刊50周年を記念して創設された第1回の受賞者に選ばれた巨人・松井秀喜外野手(25)を祝福して、政財界、スポーツ界、芸能界から日本の顔が勢ぞろいした。
 小渕首相がいる。ONがいる。北野武監督も、藤原紀香も、安室奈美恵も駆けつけた。授賞式に集まった、今、最も輝いている日本の顔。各界のその主役たちを脇役に押しやって、スポットライトを一身に受けたのは、間違いなく、この男。松井秀喜だ。

 「ロベルト・クレメンテ賞」の日本版。その第1回受賞者に、いじめ撲滅を訴えるなど、入団以来チャリティー活動を続けてきた実績が評価されて選ばれたのは「貢献度の大きさ、地道な努力の持続性」から当然だった。

 「このような素晴らしい賞を受賞させてもらって、身に余る光栄です。この賞はずっと続いていく。第1回受賞者として言動に気をつけてプロ野球のため、巨人のためにがんばります」「来年必ず優勝して王さんと対決したい」あいさつとともに、日本中のファンが待ち望むON対決実現へ、決意表明までしてみせた。

 花束贈呈役を務めた藤原紀香、長嶋監督とのスリーショットに、会場を埋めた1000人の出席者からはため息がもれる。「来年は背番号(55)と同じくらいホームランを打って、ファンに夢を与えてください」藤原紀香から送られたエールは松井ファンの声そのものだ。

 打撃部門では無冠に終わった今季、最後に手にした“球場外のMVP”が1900年代最後で最大になるビッグタイトル。「3冠以上の賞をいただいた気分です」うわずる声に来季の決意が読み取れた。

 授賞式がお開きになる寸前だった。会場がざわめいた。小渕首相の登場だ。歴代の首相でスポーツ紙関係のパーティーに出席するのは初めてだという。

 首相、松井、ON、安室が並んだこれ以上ない豪華な顔ぶれの写真撮影。突然、小渕首相が司会の徳光和夫アナのマイクを奪うようにして言った。「政界のゴールデンスピリット賞を取るように私もがんばります」ジョークまじりのあいさつに喝さいがわき上がった。

 「ゴールデンスピリット賞」と松井自身の連名で200万円を慈善団体などに寄付することも決め、手にしたのは東京芸大・絹谷幸二教授制作によるブロンズ像と1枚の絵画。だが、これまでに獲得したどんな賞よりも重い名誉に、松井は誓う。そのバットで、プロ野球選手に期待されるその精神的なパワーで、ファンに夢を与え、日本人の心から消えつつある優しさ、勇気を21世紀に伝える懸け橋になると。

 ◇選考委員(敬称略・順不同) 川島広守(プロ野球コミッショナー)、長嶋茂雄(東京読売巨人軍監督)、佐山和夫(ノンフィクション作家)、竹下景子(女優)、伏見勝(報知新聞社社長)

 川島広守コミッショナー ゴールデンスピリット賞の選考委員に。「選考に携われてうれしい。この賞が、失われつつある人への思いやり、やさしさを取り戻す契機になってくれれば」とスピーチし、同賞が今後も続くことを願っていた。

 木田優夫 自らのイラストの売り上げを福祉施設などに贈っていることもあり、松井の表彰を見ながら、「来年はメジャーでクレメンテ賞受賞を目指す」と抱負を語った。そのためには、今年1勝に終わった成績アップが必要。2年目の来季はタイガースで先発転向の可能性もあり、グラウンド内外での活躍を誓った。

 佐山和夫氏 米大リーグのクレメンテ賞を日本でいち早く紹介。ゴールデンスピリット賞の表彰には感無量の表情だ。選考委員の一人として「松井君のような人が受賞して良かった」と語り、「今後は(この賞が)ファンの注目も集まるように育っていって欲しい」と同賞の発展を願っていた。

 ◆ゴールデンスピリット賞 報知新聞社が今年制定、日本のプロ野球球団に所属している人の中から積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰するもので、毎年1回、選考委員会を開き、自薦、他薦で選ばれた候補者の中から1人を選定。欧米のスポーツ界では社会貢献活動が高く評価され、中でも米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名。球界最高の賞として大リーガーたちのあこがれになっている。一方、日本では試合の活躍を基準にした表彰がほとんどで、本賞のように球場外の功績を評価する、「球場外のMVP」を表彰する制度は初めて。

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