第12回受賞者(2010年) 日本ハム・ダルビッシュ有

2010年10月26日6時0分  スポーツ報知

第12回受賞者(2010年) 日本ハム・ダルビッシュ有
 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第12回受賞者が25日、日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)に決定した。07年3月に開発途上国に対する資金援助を目的とした「ダルビッシュ有水基金」を設立。08年からは出身地の大阪・羽曳野市にも「子ども福祉基金」、今年は紗栄子夫人(24)の出身地で自主トレ先でもある宮崎県の口蹄(こうてい)疫被害へも寄付と多岐に活動した。表彰式は来月25日に都内のホテルで行われる。
 来季も日本ハムでプレーすることを宣言したダルビッシュは受賞の知らせを聞き、すっきりとした表情で、冗談交じりに感想を口にした。「何で今まで僕が受賞していないのかなと(笑い)。結構いろいろ(活動を)やってきたので。(一昨年)岩隈さんが受賞した時にこの賞をちゃんと理解しました」と、ひそかにグラウンド外のMVP受賞を願っていたことを告白した。

 アスリートとしての意識の高さがきっかけだった。「ぼく自身、水を飲むのを大事にしている。のどが乾いたら飲むのではなくて、計算して1時間、30分おきとか量を決めてとっている」とこだわりを説明。「生きていく上で何より水が一番大事。汚染された水を飲まないといけないところもある。安全でおいしい水をどんどん出せたらいいな、と。僕は野球である程度結果を残せばいいけど、世の中には、貧しい国もあるし、そういう人のために頑張れたら」。プロ4年目で水基金を設立。1勝10万円に、賛同者からの寄付も合わせて9月までに約874万円が集まり、ネパール、カンボジアなどで井戸を掘り、くみ上げポンプを設置した。「引退してからでも、ひとつずつ、見ていきたい」と将来の視察も口にした。

 グローバルな視野の次は地元愛だった。故郷の大阪・羽曳野市への子供福祉基金。「ちゃんとした野球場がない。河川敷や公園、サッカー場のようなところで、あまり環境がいいとは言えない」。野球少年を思う心が始まりだった。夢は広がり“ダルビッシュ球場”建設へ動き始めている。「ひとつ地域に、いい球場があれば、モチベーションがあがる。いつかは作りたいなと思います」と、北川羽曳野市長を通じ要請。協力は惜しまない。養護施設訪問や、昨年は「ダルビッシュ有文庫」と図書館にコーナーも設けた。

 今季途中からは口蹄疫で苦しむ宮崎県へ1アウト3万円、合計981万円を寄付。8月末に東国原知事から終結宣言は出たが「まだ完全に復興したわけではないんで、1日でも早く元に戻ることを願っています」とメッセージを送った。

 責任感はさらに強まっている。今後も「年俸が下がっていくんだったら…、上がっていっているんで(笑い)。皆でひとつになれるようなことが出来ればと思います」と球界のエースとして率先して活動する。早ければ今オフにも羽曳野での野球教室開催を示唆。マウンドでそしてグラウンド外で、ダルビッシュの貢献は続いていく。

 ◆ダルビッシュ有(だるびっしゅ・ゆう) 1986年8月16日、大阪・羽曳野市生まれ。24歳。東北高では2年春から4季連続甲子園出場。2004年、ドラフト1巡目で日本ハムに入団。2年目に12勝で日本一に貢献。以来5年連続2ケタ勝利。防御率は07年から4年連続1点台。08年北京五輪代表。09年WBC代表では優勝に貢献。今季は最優秀防御率、最多奪三振の2冠。196センチ、90キロ。右投右打。家族は紗栄子夫人と2男。

 ◆選考経過

 選考会の冒頭、佐山和夫委員が「全体の環境が非常に整ってきた。多層な活動が起こってきている。1~3回あたりとは隔世の感がある」と創設から12年間で、球界全体に社会貢献活動が浸透したことを高く評価した。

 候補として名前が挙がったのは15人。骨髄バンクのドナー登録を呼びかけるポスター6万枚を自己負担で作製したソフトバンクの杉内投手、1三振につきランドセル1つを児童養護施設の子供たちに贈っている巨人・内海投手など、各選手の多種多様な活動内容が報告された。その中で最終候補には、日本ハム・ダルビッシュ投手とロッテ・西岡内野手が残った。

 西岡は07年から児童福祉施設の子供たちを球場に招待。09年から1安打につき1万円を白血病患者支援基金に寄付している。永年チャリティー活動をしている平尾昌晃委員は「社会福祉は不特定多数の人に、幅広くやっていかないといけない。賞に値するとなると話題性も見逃せない」とダルビッシュとともに200安打をマークした西岡も同様に評価した。

 しかし、最も支持を集めたのは3年連続で最終候補に挙がったダルビッシュだった。07年3月に水不足に苦しむ開発途上国援助を目的とした「ダルビッシュ有水基金」を設立。総額は900万円近くに達している。08年からは出身地の大阪・羽曳野の児童養護施設の子供たちに野球用具などをプレゼント。今年6月には宮崎の口蹄疫被害に対して、1アウトにつき3万円を寄付する活動を発表した。

 赤い羽根共同募金の名誉会長も務めている長尾立子委員は「水基金は違う着眼点。国際的な貢献も大きい」。加藤良三委員も「視点の新しさを含め同意見です」とダルビッシュを推した。都合により選考会を欠席した長嶋茂雄委員も、書面で「彼の活動には国際的なスケールの大きさと、生まれ育った地元への細やかな愛情、双方が伺えます」と推薦。岸洋人委員も「グローバルな視点を12球団の選手に示した」と賛同し、最終的には全会一致で決定した。

 ◇選考委員(敬称略・順不同) 加藤良三(プロ野球コミッショナー)、長嶋茂雄(読売巨人軍終身名誉監督)、佐山和夫(作家)、長尾立子(学校法人日本社会事業大学理事長)、平尾昌晃(歌手、作曲家)、岸洋人(報知新聞社社長)

 ◆ゴールデンスピリット賞

 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回、選考委員会(委員名別掲)を開いて、自薦、他薦で選ばれた候補者の中から1人を選定する。欧米のスポーツ界では社会貢献活動が高く評価され、中でも米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーのあこがれの的になっている。

 日本では試合での活躍を基準した賞がほとんどで、球場外の功績を評価する表彰制度は初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸大・絹谷幸二教授作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また、受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◆阿部雄二賞 2001年4月9日、本賞を第1回から協賛しているサァラ麻布(株式会社サァラ)の代表取締役社長・阿部雄二氏が逝去。同氏は本賞の協賛をはじめ、長年にわたり財団法人報知社会福祉事業団、ユニセフ(国連児童基金)等に寄付を続けてきた。サァラ麻布は同氏の遺志として3000万円を報知新聞社に寄贈、同賞の充実、発展を希望。報知新聞社はその遺志を尊重し、長く後世に伝えるため「阿部雄二賞」を創設し、受賞者に特別賞として100万円を贈っている。

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