第13回受賞者(2011年) 楽天・山崎武司

2011年11月15日6時0分  スポーツ報知

第13回受賞者(2011年) 楽天・山崎武司
 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第13回受賞者が14日、楽天・山崎武司内野手(43)に決定した。中日、オリックス時代から児童施設訪問などに力を入れ、楽天移籍後の07年から本塁打数に応じた「ホームラン基金」を設立。08年は岩手・宮城内陸地震で被災した栗原市への寄付などで地元に貢献。今年3月の東日本大震災後も、復興支援に力を注いでいる。表彰式は24日に都内のホテルで行われる。
 来季の所属チームも決まらぬ中、受賞の知らせを聞いた山崎は、少年のように顔をくしゃくしゃにした。「自分一人の力ではできないこと。色んな人の力を借りながらやってきたことが評価されてうれしい」と無邪気な笑顔で喜びをかみ締めた。

 きっかけは、ささいなことだった。中日時代、知人らを介して児童施設を訪問した。「本当に最初は子供たちに喜んでもらいたかっただけ」という気持ちで始めたボランティアだった。いつしか、サンタクロースに仮装して子供たちを喜ばしたり、夏休みにナゴヤDへ少年数十人を招待するようになった。自称ガキ大将の「ジャイアン」はグラウンドを一歩離れれば、誰より優しい。

 オリックス移籍後の04年オフに戦力外となって仙台へ。「野球なんて二度とやらねぇって思っていた時に楽天に拾ってもらった。楽天が、仙台のファンが野球を本当に好きにさせてくれた。何か恩返しをしたいという気持ちだった」。07年に本塁打基金を設立。08年には岩手・宮城内陸地震で被災した栗原市に260万円を寄付した。栗原市は栗駒球場の愛称を「山崎武司球場」とした。毎年、山崎武司杯を開催している。東北を愛する男は、東北に愛された。

 現在も1本塁打あたり10万円を積み立てて宮城県などに寄付。総額は約1500万円にのぼる。現在は闘病中の子供や家族を支援するため、NPO法人にも寄付を行っている。楽天の来季の戦力構想から外れ、現役を続けるため今季限りで退団するが、「『じゃあやめます』というわけにもいかない。続けていきたい」と約束した。

 東日本大震災後、4月8日に初めて楽天ナインが被災地を訪れた際、バスの窓から小学生が手を振るのが見えた。訪問先の予定には入ってなかったが、急きょバスを降りて交流した。訪問スケジュールには、名取市長との懇談などが待っていたが、「市長を待たせても構わないから」と周囲を説得し、子供たちを励ました。4月30日のオリックス戦(Kスタ)では、観戦に訪れた南三陸町の中学野球部員ら約20人のためにアーチをプレゼントした。「被災した人たちの笑顔に、逆に元気をもらった」と声を詰まらせたこともある。来季は違うユニホームを着るが、東北を忘れることなく、社会貢献活動を続けていく。

  山崎 武司(やまさき・たけし)1968年11月7日、愛知県生まれ。43歳。愛工大名電から86年ドラフト2位で中日入り。96年に本塁打王を獲得するなど活躍したが、02年オフにオリックスへトレード移籍。04年オフに戦力外通告、楽天入り。07年には2度目の本塁打王と初の打点王に。現役通算25年間で2108試合、打率2割5分8厘、402本塁打、1185打点。本塁打王2度、打点王1度、ベストナイン3度。182センチ、100キロ。右投右打。既婚。

 ◆選考経過

 東日本大震災への対応をどう評価するか。ゴールデンスピリット賞としての向き合い方から、選考会の議論は始まった。

 佐山和夫委員は「日本プロ野球界は3・11の後、素早い対応を見せた。各選手、各球団、いずれも等しく尊い気持ちからのもの。しかし、この(GS)賞は活動の継続性、幅広さを考慮すべきでは」と提言。加藤良三委員も「大震災に選手はすごい活動をした。差をつけるわけにはいかない」として、これまでの継続性から、楽天・山崎武司内野手、ロッテ・今江敏晃内野手の名前を挙げた。

 自らも福島などへ被災者支援に出向いた平尾昌晃委員は、「全球団がすぐに立ち上がった。プロ野球界が一丸となって、素晴らしいと感動した」と野球界の取り組みを絶賛。その上で「なかなか目を向けられることのない児童擁護施設への支援は素晴らしい」と、巨人・内海哲也投手を推薦した。

 リハビリで選考会を欠席した長嶋茂雄委員は、文書で「3年前の岩手・宮城内陸地震の被災地、被災者へもいち早く支援の手をさしのべた」として楽天・山崎を候補に。所用で欠席した長尾立子委員は、大震災への対応から楽天・嶋基宏捕手を推した。

 その後、震災支援という意味では差をつけるわけにはいかないが、被災した当該球団として、楽天の頑張りを評価する声が続出。その中で本塁打基金や福祉施設への寄付、小児病棟の慰問など、多彩な活動を続けている山崎に、全会一致で決定した。  ◇選考委員(敬称略・順不同) 加藤良三(プロ野球コミッショナー)、長嶋茂雄(読売巨人軍終身名誉監督)、佐山和夫(作家)、長尾立子(学校法人日本社会事業大学理事長)、平尾昌晃(歌手、作曲家)、岸洋人(報知新聞社社長)

 ◆ゴールデンスピリット賞

 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回、選考委員会(委員名別掲)を開いて、自薦、他薦で選ばれた候補者の中から1人を選定する。欧米のスポーツ界では社会貢献活動が高く評価され、中でも米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーのあこがれの的になっている。

 日本では試合での活躍を基準した賞がほとんどで、球場外の功績を評価する表彰制度は初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸大・絹谷幸二教授作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また、受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◆阿部雄二賞 2001年4月9日、本賞を第1回から協賛しているサァラ麻布(株式会社サァラ)の代表取締役社長・阿部雄二氏が逝去。同氏は本賞の協賛をはじめ、長年にわたり財団法人報知社会福祉事業団、ユニセフ(国連児童基金)等に寄付を続けてきた。サァラ麻布は同氏の遺志として3000万円を報知新聞社に寄贈、同賞の充実、発展を希望。報知新聞社はその遺志を尊重し、長く後世に伝えるため「阿部雄二賞」を創設し、受賞者に特別賞として100万円を贈っている。

ページトップ