【2001年】武蔵丸が満場一致で2年ぶり2度目の受賞

21世紀の報知年間最優秀力士賞に選ばれた横綱・武蔵丸 21世紀の報知年間最優秀力士賞に選ばれた横綱・武蔵丸
 報知新聞社制定「平成13年・第44回報知年間最優秀力士賞」が18日、横綱・武蔵丸(30)=武蔵川=に決まった。選考委員会が東京・虎ノ門のホテルオークラで開かれ満場一致で決定。武蔵丸は1999年以来2年ぶり2度目の受賞。表彰式は来年1月13日、大相撲初場所(両国国技館)初日の土俵上で行われ、黄金の表彰状と賞金100万円、副賞のキヤノンカメラが贈られる。
◆泣いて、泣いて、泣いて最後に笑った

 顔をクシャクシャにして喜んだ。「つらい1年だったから、笑って年を越せるのは本当にうれしいよ」一時は受賞を辞退する覚悟だった。九州場所5日目に2年ぶり2度目の年間最多勝を決めた武蔵丸だが、今年はそれまで優勝がなく、九州で取り損ねると史上初の「6場所Vなし最多勝」という不名誉に…。「優勝できなかったらMVPはいらない」と宣言し、7場所ぶりに賜杯を抱いてみせた。

 波乱の1年だった。初場所後、ハワイの先輩横綱・曙が引退した。そして“悲劇の”夏場所を迎える。今年一番の名場面は小泉首相が「痛みに耐えてよ~くがんばった。感動した!」と絶叫した夏場所の貴乃花の優勝シーンだろう。千秋楽結びの一番、右ひざの重傷を押して出場した貴乃花は武蔵丸のはたきに、ハラリと前に落ちた。続けて行われた優勝決定戦、武蔵丸は奇跡を“アシスト”した。「嫌な思い出だ。二度とやりたくない。けがしてる人とね。向こうがやる気マンマンでも、こっちは…」と言って言葉をのみ込んだ。

 師匠・武蔵川親方(元横綱・三重ノ海)には勝負に徹し切れない「甘さ」を指摘された。けがを押して土俵人生をかけてきた貴乃花との戦いは思い出したくもない。場所後は1週間、部屋に閉じこもり、しばらく貴乃花の顔を見るのも嫌だったという。その貴乃花が長期休場に入り、名古屋から初のひとり横綱を経験したのは皮肉だ。

 満身創痍(い)の横綱は、秋場所で史上最多5個の金星配給という失態を演じた。「両足首もそうだけど、本当に痛かったのは右肩だった」という。得意の右を差し、腕(かいな)を返す必勝パターンは望むべくもなかった。「あそこで休んでたら引退してたかも」横綱昇進後ワースト9勝6敗の悔しさを、九州の復活優勝につなげた。13日からけいこを再開。武蔵丸の来年はもう始まっている。(酒井隆之)

 ◆武蔵丸光洋(むさしまる・こうよう) 米国名、フィヤマル・ペニタニ。1971年5月2日、米ハワイ州オアフ島生まれ。30歳。武蔵川部屋。89年秋、初土俵。91年名古屋、新十両。同年九州、新入幕。94年春、大関昇進。同年名古屋で全勝初優勝。96年に日本国籍取得。99年春、夏連覇で第67代横綱に昇進。191センチ、225キロ。得意は突き、押し、右四つ、寄り。独身。

 ◆選考経過

 今回の選考は、年間最多勝ながら優勝1回だけの横綱・武蔵丸が受賞するに足るかどうかが焦点となった。実際、委員の間からは「本当を言えばふがいない」(伏見委員)という声もあった。しかし、73勝は2位の栃東を11勝も引き離す断トツの数字。九州場所Vで「優勝なし年間最多勝」の不名誉な記録を免れたのも決め手になった。「勝ち数は問題ないし、優勝1回でもいい」(有馬委員)、「4回優勝した一昨年より勝利数は多い」(青木委員)と各委員も賛成。「報知年間最優秀力士賞は実力を評価するもの」(伏見委員)という言葉に、委員の意見は集約された。

 ただ、各委員とも「貴乃花が故障している今、武蔵丸もけがをしたら壊滅的になる」(有馬委員)、「実力が拮抗(きっこう)した力士が競争すると人気が出てくると思うのですが…」(安西委員)と相撲人気の長期低落傾向を心配。「栃東、朝青龍、琴光喜あたりにもっと頑張ってもらわないと」(伏見委員)という声が強かったことも付け加えておきたい。(草野直樹)

 ◇選考委員 有馬朗人(参院議員)、安西邦夫(東京ガス会長)、平山郁夫(日本画家)、伏見勝(報知新聞社社長)、青木辰衛(報知新聞社編集局長)

◆武蔵丸の成績

場所 成績
西横綱◎14勝1敗
西横綱 12勝3敗
西横綱◎13勝2敗
名古屋 西横綱◎12勝3敗
東横綱  9勝6敗
九州 東横綱◎13勝2敗

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 武蔵丸 武蔵川 73勝17敗 .811
2 栃東 玉ノ井 62勝28敗 .689
3 武双山 武蔵川 59勝31敗 .656
4 朝青龍 若松 53勝37敗 .589
5 琴光喜 佐渡ケ嶽 51勝39敗 .567

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