【2009年】白鵬来年は６場所完全Ｖ

◆自信たっぷり「取りこぼしなくせばいい」

　文句なしだ。今後、誰も手が届かないだろう年間８６勝。白鵬は喜びと感謝を口にした。「本当にうれしいです。応援してくださった方々や家族の支えがあったから達成できた。最高の１年」。３年連続での栄冠。「充実して早かった」０９年を思い出し、笑顔がはじけた。

　年頭の目標は「８０勝以上」だったが、終わってみれば大偉業を達成。同時に「力士の理想像」としてあこがれる不世出の横綱・双葉山の優勝１２回にも並んだ。秋場所前に左ひじじん帯を損傷するアクシデントもあったが「けがはけいこで治す」と、弱音を吐かずに土俵に集中した。相撲は下半身―。これまでより、しこを重視し、多少のけがを抱えていても崩れない体をつくり、結果につなげた。

　２０１０年も大記録に挑む。これまでに横綱・朝青龍しか達成していない年６場所完全制覇と７連覇だ。「６連覇？　自分の中では見えてきてはいる。取りこぼしさえなくせばいい」と、自信をのぞかせる。今年は、史上初の年６場所１４勝以上と安定感は抜群。記録達成は不可能ではない。

　一方で克服する点もある。優勝を逃した３場所は、すべて決定戦でＶ逸。ここ一番での勝負弱さが目立った。「優勝は（４回の）去年の方が多かったからね。だから、これまで以上に心技体を磨いていきたい」。０９年のことはすべて忘れ、改めて相撲道に突き進む覚悟だ。

　１０年を完全制覇すれば優勝回数は１８回。１１年には「ぜひ並びたい」横綱・貴乃花の２２回に手が届く。日本国籍取得も考えているため、２０回以上優勝すれば一代年寄が与えられることは確実で「（一代年寄は）協会が実績を認めてくれる証し。そうなればうれしいし、ありがたい」。ライバル・朝青龍も一時の引退危機から脱出した。白鵬もいつ土俵でけがするかも分からない。優勝２０回への、道のりは厳しい。でも、相撲と真摯（しんし）に向き合う白鵬なら、きっと夢を実現する。

　◆白鵬翔（はくほう・しょう）　本名ムンフバト・ダヴァジャルガル。１９８５年３月１１日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。２４歳。宮城野部屋。２０００年１０月来日。０１年春場所で初土俵。０４年夏、新入幕。０６年春場所後に大関。０７年夏場所後に第６９代横綱に昇進。優勝１２回。殊勲賞３回、敢闘賞１回、技能賞２回。金星１。得意は右四つ、投げ。家族は夫人と１女１男。１９２センチ、１５３キロ。

　◆選考経過

　満場一致で白鵬の３年連続受賞が決まった。選考会の冒頭、歴代最多の年間８６勝の偉業に有馬委員が「もう決まってますね」と白鵬を推薦すると安西委員も「年６場所すべて優勝に絡んだことはすばらしい」と拍手。佐田の山委員は「心技体どの面から見ても優れている」と品格も絶賛され最優秀力士の栄光を白鵬が射止めた。

　初場所と秋場所で２度、優勝し復活を印象づけた朝青龍をまったく寄せ付けない受賞。岸委員が「名横綱の道をまっしぐらに進んでいる」と評価すると有馬委員からは「そう呼ばれるよう努力してください」と２０１０年へのさらなる精進への期待が飛び出した。一方で白鵬の独走を許した大関以下の力士への奮起を促す議論が白熱。室委員は「周りの力士がもっと力を発揮してもらわないといけない」と新勢力の台頭を強く望んでいた。

　◇選考委員　有馬朗人・日本科学技術振興財団会長（武蔵学園学園長）。安西邦夫・東京ガス相談役。佐田の山晋松・日本相撲協会元理事長（第５０代横綱）。岸洋人・報知新聞社代表取締役社長。室雄二・報知新聞社編集局長。

　◇副賞　表彰式では高さ８０センチの「スポーツ報知杯」、賞金１００万円、キヤノンマーケティングジャパンから「キヤノン　デジタルビデオカメラ　ｉＶＩＳ　ＨＦ２１」が贈られる。

※◎は優勝。