【2014年】白鵬「自分を褒めたい」

◆大鵬、千代の富士超え

　九州場所で大鵬に並ぶ史上最多３２回目の優勝を飾った白鵬が、また一つ偉業を達成した。年６場所制となった１９５８年から制定され今年で５７回の歴史を数える最優秀力士賞。８回目の受賞は大鵬、千代の富士を抜いて受賞回数で単独最多となった。さらに自身が持つ最多連続受賞記録を更新する８年連続での栄冠だ。

　受賞を聞かされた白鵬は「８年というのは心と体がかみ合わなければ絶対にできない。本当にすごい両横綱を抜いたので、自分を褒めたい」と喜んだ。さらに「（優勝回数で）大鵬親方を抜いたわけではないけど、違う記録で抜いたわけですね」。生前に“角界の父”として慕った大横綱に思いをはせ、感慨深げに話した。

　今年は新怪物・逸ノ城の登場、ホープ・遠藤の人気ぶり、鶴竜の横綱昇進など話題は豊富だったが、成績では第一人者の白鵬が圧倒した。春場所こそ鶴竜に賜杯を譲ったが、そのほかの５場所はすべて優勝し、年間成績は８１勝９敗。単独最多８回目の年間最多勝を８年連続で達成するなど、他の追随を許さなかった。

　ハイライトは、何といってもＶ３２を達成したことだ。記録がかかる九州場所初日の１週間ほど前には、大鵬さんの納谷芳子夫人（６７）からのビデオメッセージをもらったエピソードを披露。「『今場所は記録がかかっているかもしれませんが、親方が見守ってくれているよ』という内容だった。緊張したね」と回想した。今月１６日には、芳子夫人と一緒に大鵬さんの墓前に立ったことも明かし「何を（墓前に）報告したかは秘密。あらためて並んだことは言いました」と話した。

　記録的な一年が幕を閉じ、１５年は前人未到の偉業に挑む。もちろん史上単独最多のＶ３３だ。「並んだときに“恩返し”との言葉を発信したけど勢い余った」と白鵬。「相撲界は稽古をつけてくれた先輩に本場所の土俵で勝ってこそ恩返しという言葉がある。超えたことで本当の恩返しができると思う」と力を込めた。この勢いで一気に偉大な記録を超える。

　◆白鵬翔（はくほう・しょう）　本名・ムンフバト・ダヴァジャルガル。１９８５年３月１１日、モンゴル・ウランバートル市生まれ。２９歳。宮城野部屋。２００１年春、初土俵。０４年初、新十両。同年夏、新入幕。０７年夏場所後に第６９代横綱昇進。１０年に史上２位タイの６３連勝。同年春～１１年技量審査場所にかけ、史上最多タイの７連覇。優勝回数は史上最多タイの３２回。１９２センチ、１５７キロ。得意は右四つ、寄り。家族は紗代子夫人（３０）と１男２女。

　◆選考経過

　選考会では年６場所中５場所を制覇、史上最多タイの優勝３２回などの偉業を達成した白鵬が、文句なしの受賞となった。有馬委員が「圧倒的に強かった」と第一声。さらに奥島委員が「年齢的に相当の優勝回数を残せるのではないか」と続き、早川委員も「対抗馬不在。白鵬以外考えられない」。丸山委員も「白鵬をさしおいて最優秀の冠をかぶせられる人はいない」と評価する声が相次いだ。

　これで８年連続の栄冠。だが裏を返せば、白鵬の１強時代がそれだけ長く続いていることを意味する。その状況に有馬委員は「日本全体の相撲に対する関心を高めてくれる、いい力士が育ってほしい」と期待した。早川委員は「若い人たちの台頭を待ちたい。逸ノ城、遠藤の２人がこの一年でどれだけ期待させてくれるか」。新しい力がより一層成長することを求めた。

　◇選考委員　有馬朗人・学校法人根津育英会武蔵学園長、奥島孝康・日本高等学校野球連盟会長、早川正・報知新聞社代表取締役社長、丸山伸一・報知新聞社常務取締役編集局長

※◎は優勝。