【2020年】大関・貴景勝、「報知年間最優秀力士賞」日本出身力士は若乃花以来22年ぶり

ガッツポーズする貴景勝 ガッツポーズする貴景勝
 報知新聞社制定「令和2年(2020年)第63回報知年間最優秀力士賞」に大関・貴景勝(24)=常盤山=が20日、初選出された。都内のホテルで行われた選考会では、2横綱2大関不在の11月場所で看板力士としての務めを果たす優勝や、初の年間最多勝(5場所51勝)などが評価された。日本出身力士の受賞は1998年の横綱・若乃花以来22年ぶり。来年初場所(1月10日初日、東京・両国国技館)では初の綱取りに挑む。表彰は初場所初日に行われ、スポーツ報知杯、賞金が贈呈される。
◆平成大関最小175センチ

 初受賞の知らせに、貴景勝が表情を緩めた。日本出身力士としては横綱・若乃花以来22年ぶり。過去の受賞者一覧に目を通し「これか、98年。22年ぶりなんや」と実感を込めた。遡れば、歴代受賞者には大鵬、北の湖、千代の富士らが並ぶ。「横綱が多い。それも角界のトップでやっていた人たち。ますます頑張っていかないとな」と、気を引き締めた。

 11月場所で13勝を挙げ、自身2度目の優勝。大関としては2017年初場所の稀勢の里以来、約4年ぶりに賜杯を抱いた。コロナ禍に揺れた今年は通算51勝(5場所)で初の年間最多勝にも輝いた。「大関としても優勝したかったしよかった。1年間積み重ねてやれてきた結果だと思う」と胸を張った。

 昨年の春場所後に大関昇進。新大関で迎えた夏場所で右膝を負傷し途中休場すると、翌場所も全休で一度関脇に転落した。大関復帰を決めた秋場所では今度は左胸を肉離れ。その後も左膝の不調などが続き、思うような相撲は取れなかった。「やっぱり去年から、一生懸命やりたくてもできない時期もあった」。治療と強化を並行する中、悩みなく土俵に立てるようになったのは、今年の後半に入ってからだったという。

 秋場所で12勝を挙げて優勝次点。思い切り相撲を取れる喜びを感じた。「すごいうれしかった。普通に場所前の調整も自分がいいようにやれた」。身長175センチは、平成の大関25人の中では最も小さい。「自分の体もよくやってくれたと思ってますし。また来年も頑張ってほしいですね。自分の体に」と“ねぎらい”の言葉をかけた。

 初場所では、四つ相撲に比べて安定性に欠けることから難しいとされる突き押しで初の綱取りに挑む。「徹底して押しを磨いて、体があまりない子でも『突き相撲でこの世界で勝っていけるんだ』というところも見せたい」と秘める思いも明かした。横綱への意識も「なりたいけど、なるためには強くならないといけない。だから、まだ強くなりたいという思いの方が強い」と言い切った。貴景勝は、2021年もただ自分と向き合い続ける。

 ◆貴景勝 光信(たかけいしょう・みつのぶ)本名:佐藤貴信。1994年8月5日、兵庫県・芦屋市生まれ。26歳。175センチ、183キロ。得意は突き・押し。

 ◆選考経過 今年はコロナ禍で夏場所が中止になるなど異例の1年となった。5場所の開催だったが、全ての優勝力士(徳勝龍、白鵬、照ノ富士、正代、貴景勝)が異なるのは1991年以来29年ぶり。白鵬、鶴竜の両横綱に休場が目立った中、候補選出の段階から11月場所も一人大関として賜杯を抱いた貴景勝が議論の中心になった。

 能町委員は「この1年、ずっと大関を張って最後は優勝した。頭から当たって、押し一本の相撲内容も積極的だった」と高評価。一方で、「(春場所の)負け越しがある。最優秀力士としてはどうか」(奥島委員)と慎重な意見もあった。

 それでも、2横綱2大関が休場した先場所など、看板力士として孤軍奮闘する姿は印象深かった。「膝の故障を抱えながらも努力を続けた。受賞の資格はある」(山本委員)と推した。年5場所で通算51勝。初の年間最多勝も大きかった。「1場所平均して10勝以上。来場所は初の綱取りになる」(丸山委員)と貴景勝の今後に期待を込めた。

 秋場所初優勝で大関昇進の正代は先場所途中休場。7月場所で復活Vの照ノ富士は序盤の2場所を十両で過ごしており、最終的に貴景勝の初受賞にまとまった。

 ◇選考委員 奥島孝康(白鴎大学長)、能町みね子(文筆家)、丸山伸一(報知新聞社代表取締役社長)、山本理(報知新聞社編集局長)

 ◆95年から選考委員有馬朗人さん逝去
 1995年から本賞の選考委員を務め、原子核物理学者で文相兼科学技術庁長官を務めた元東京大学総長の有馬朗人さん(享年90)が今月7日に逝去されました。選考委員会では大相撲に対して的確かつ重みのある意見で議論をリードしつつ、いつも笑顔で場を和ませてくださいました。ご冥福をお祈りします。

◆貴景勝の成績

場所 成績
大関 11勝4敗
大関 7勝8敗
中止
名古屋 大関 8勝4敗3休
大関 12勝3敗
九州 大関◎13勝2敗

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 貴景勝 常盤山 51勝24敗 .680
2 正代 時津風 48勝27敗 .640
3 隆の勝 常盤山 45勝30敗 .600
4 朝乃山 高砂 44勝31敗 .587
5 御獄海 出羽海 43勝32敗 .573

※勝率の休場は負けで計算。

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