【2022年】関脇・若隆景、「報知年間最優秀力士賞」30年ぶり関脇以下

報知年間最優秀力士賞に選出された若隆景 報知年間最優秀力士賞に選出された若隆景
 報知新聞社制定「令和4年(2022年)第65回報知年間最優秀力士賞」に関脇・若隆景(28)=荒汐=が27日、初選出された。都内で行われた選考委員会では、春場所の初優勝や初の年間最多勝(57勝)などが評価された。関脇以下の受賞は1992年の貴花田(後の横綱・貴乃花)以来30年ぶり。来年は大関昇進の期待がかかる。初場所初日(来年1月8日、両国国技館)に表彰が行われ、スポーツ報知杯、賞金が贈呈される。
◆若貴以来兄弟三役ダブルの喜び

 若隆景が、初受賞の吉報に声を弾ませた。関脇以下では30年ぶり2人目。大鵬、千代の富士ら歴代の受賞者を目にすると、「栃若時代からですか。昔から見てきたお相撲さんばかりでみんな横綱、大関。ここに名前を連ねるのは信じられない」と驚嘆。次期大関の呼び声高い相撲巧者は「名誉ある賞をいただけたことは励みになりますし、この面々を見たら、上を目指さないといけないなという気持ちです」と決意を新たにした。

 若隆景は春場所で双葉山以来86年ぶりの新関脇V。軽量の部類に入る130キロ前後ながら、代名詞の強烈なおっつけで巨漢相手にも体重差を物ともせず、今年は年6場所全て勝ち越した。「ここまで活躍できるというのは(今年が)始まった時には思っていなかった。下から攻める相撲をブレずにやってきてよかった。もっと磨き、来年もいい年にしたい」とうなずいた。

 幕下・若隆元を長兄に、若元春(ともに荒汐)を次兄に持つ大波3兄弟の末っ子。それぞれのしこ名は戦国武将・毛利元就の3人の息子にちなみ、若隆景は小早川隆景が由来。26日の来年初場所番付発表では、若元春の新小結昇進が決まり、91年九州の若花田(後の横綱・若乃花)、貴花田以来、史上4組目の兄弟三役誕生の節目にもなった。貴花田は初受賞翌年に大関に昇進し、横綱にまで上り詰めた。憧れの「若貴」以来の快挙に、若隆景は「(兄弟で)上で活躍できるのは地元・福島にとっても、部屋にとってもいいこと」とダブルの喜びをかみしめた。

 11月の九州場所で正代が大関から陥落し、2023年初場所は125年ぶりに1横綱1大関となり、番付は危機的な状況で新年を迎える。「次で(関脇)6場所目になる。この賞に恥じないように、相撲を取っていきたい。期待の声にも応えられるように、もっともっと努力をして頑張ります」。実直な若武者は大関、そしてさらに上へ。夢の階段を一歩ずつ上っていく。

 ◆若隆景 渥(わかたかかげ・あつし)本名・大波渥。1994年12月6日、福島市生まれ。28歳。小1から本格的に相撲を始める。学法福島、東洋大を経て荒汐部屋から2017年春に初土俵。18年夏、新十両。19年九州、新入幕。今年春場所で初優勝。最高位は関脇。祖父は元小結・若葉山、父は元幕下・若信夫。得意は右四つ、寄り。183センチ、132キロ。

 ◆選考経過 今年は1958年の年6場所制以降で72年、91年に続き、31年ぶりに6場所全て違う力士が優勝(5場所開催の2020年を除く)した。関脇以下が年間5度制覇、3場所連続で平幕優勝はともに初めて。さらに混戦を深める1年となった。

 それだけに選考委では、宮田委員が第一声で「大変難しい」と発した言葉を象徴するように議論は白熱。春場所を制し、57勝で年間最多勝も獲得した若隆景、勝ち星2位の豊昇龍と琴ノ若、37歳10か月で昭和以降最年長優勝の玉鷲ら、様々な名前が挙がった。

 その中で、候補は徐々に若隆景に絞り込まれた。関脇以下での最多勝は大鵬(60年)、貴花田(92年)、朝乃山(19年)に次いで4人目。刈屋委員が「過去の3人は負け越している。全て勝ち越しているのは高く評価できる」と話せば、能町委員も「自分の形も定まっているし、相撲内容もすごくいい」と評価した。

 依田委員も「全体を見れば優勝、最多勝を取った若隆景を推すのが適当」と続いた。山本委員は「コロナ禍での皆勤も評価対象になっていい」と土俵に立ち続けたことを評価した。宮田委員も「私も若隆景を推す」と同調し、満場一致での選出となった。

 ◇選考委員 宮田亮平(金属工芸家、前文化庁長官、元東京芸術大学学長)、刈屋富士雄(立飛ホールディングス執行役員、元NHKアナウンサー)、能町みね子(文筆家)、依田裕彦(報知新聞社代表取締役社長)、山本理(報知新聞社執行役員編集局長)

◆若隆景の成績

場所 成績
東前1 9勝6敗
東関脇◎12勝3敗
東関脇 9勝6敗
名古屋 東関脇 8勝7敗
東関脇 11勝4敗
九州 東関脇 8勝7敗

※◎は優勝。

◆年間成績

順位 力士名 所属 成績 勝率
1 若隆景 荒汐 57勝33敗 .633
2 豊昇龍 立浪 55勝35敗 .611
3 琴ノ若 佐渡ヶ嶽 55勝31敗4休 .611
4 若元春 荒汐 53勝37敗 .589
5 霧馬山 陸奥 51勝39敗 .567

※勝率の休場は負けで計算。

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