2023年9月4日12時00分 スポーツ報知
実際の障がい者殺傷事件から着想を得て
2017年に発表された辺見庸の小説『月』を映画化。
いま、世に問うべき大問題作が放たれる―。
それはこの人間が生きる市民社会において、
禁忌(タブー)とされる領域の奥深くへと大胆に踏み込むものだ。
しかしそこで剥き出しになる極限的な光景は、
まぎれもなく、われわれ人間の姿である。
そのおぞましく矛盾に満ちた真実を、
排除するな、直視せよ、とこの映画は迫り、
欺瞞(ぎまん)や虚飾をぎりぎりまで削いでいくような
思考の彼方へと連れて行く。
映画を観る者は一切の綺麗事から遠く離れた、
人間の存在と社会の在り方にまつわる本質的な問いを、
重い衝撃と共に突きつけられるだろう。
社会が、そして個人が、
問題に対して“見て見ぬふり”をしてきたという
現実をつまびらかにし世に問う本作が放たれることによって、
鑑賞するわれわれもまた、
他人事では済まされないという覚悟が問われることになるだろう。
(プレス資料より抜粋)
〈ストーリー〉
太陽が見えないほど、深い森の奥にある重度障害者施設「三日月園」。ここで新しく働くことになった堂島洋子は元・有名作家だ。東日本大震災を題材にしたデビュー作の小説は世間にも評価された。だがそれ以来、新しい作品を書いていない。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平は人形アニメーション作家だが、その仕事で収入があるわけではない。経済的にはきつい状況だが、それでも互いへの愛と信頼にあふれた二人は慎ましく暮らしを営んでいる。
施設職員の同僚には作家を目指す坪内陽子や、絵の好きな青年さとくんらがいた。洋子は昌平ともども、妹や弟のように年齢の離れた彼らと親しくなる。そしてもうひとつの大切な出会いがあった。洋子と生年月日が一緒の入所者、“きーちゃん”だ。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない“きーちゃん”のことを、洋子はどこか他人に思えず親身になっていく。
そんな折、洋子の妊娠が判明した。高齢出産になることもあり、彼女は産むという選択にひとり不安を覚える。
施設の仕事にはだんだん慣れてきたものの、しかしこの職場は決して楽園ではない。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力、虐待を目の当たりにする。だが施設の園長は「そんな職員がここにいるわけない」と惚けるばかり。障害者たちの人間らしい生活を支援するはずのこの場所で、不都合な現実の隠蔽がまかり通っているのか。
そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。
彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく。特に、誰も入ってはいけないと言われている“高城さん”の入所部屋――その扉を開けてしまった時、さとくんの中で何かが一線を超えてしまう。
「やっと決心がつきました。頑張ります。この国のためです。意味のないものは僕が片づけます」
そして、その日はついにやってくる。――。
○出演
宮沢りえ
磯村勇斗
長井恵里 大塚ヒロタ 笠原秀幸
板谷由夏 モロ師岡 鶴見辰吾 原日出子 / 高畑淳子
二階堂ふみ / オダギリジョー
監督・脚本:石井裕也
原作:辺見庸『月』(角川文庫刊)
配給:スターサンズ
○公開日
10月13日(金)全国公開
©2023『月』製作委員会