2025年5月11日8時00分 スポーツ報知
すみだ地域コミュニティー季刊紙『すみだ報知』第10号は「コーヒー&カフェ」大特集です。春秋開催の「Sumida Coffee Festival」(すみだコーヒーフェスティバル)は今やイーストTokyo最大規模のコーヒーイベント。自家焙煎(ばいせん)珈琲店を中心としたフェス参加のカフェに、個性派&レトロ喫茶を集めた「すみだ報知選 墨田区コーヒーマップ」(中面掲載)を手にお散歩すれば、まさにイベントコンセプトの『コーヒーから、すみだを旅しよう。』の気分。『すみだで、カップいっぱいの幸せを。』詰め込んだ今号も、すみだのまちのスポーツ、文化・芸術情報盛りだくさんです!
◆仕事をサボって喫茶店でアホ話
高校を卒業して写真学校へ通っていた頃、夕方から大阪はミナミの宗右衛門町の近くのジャズ喫茶でアルバイトをしていた。この店はその頃いっぱいあったジャズ喫茶の中でも珍しいジャズボーカルのレコードだけをかける店でした。コーヒーを運んだり、レジを打ったり、レコードを選んでかけたりするのが僕の仕事。お客さんは同じビルの中のナイトクラブのホステスさんやバンドの人たちでした。隣には大きなキャバレー「メトロ」があり、そこの男のダンサーは毎日休憩の時にやってきて「モリちゃ~ん、ゲンキ~」と言いながらレジに立つ僕のお尻をポンと触ってくる。
写真よりやっぱりイラストレーターになりたいなぁと思って写真学校を中退して、どうしたらイラストレーターになれるのやろかと考えながらうちでボーッと過ごしていた頃、近所の喫茶店に毎日行ってはお店の人とダラダラくだらない話をしていた。多い時は朝から8時間もいてたことがある。そんな時、店主が「そんなに暇やったらうちでウェーターしないか?」と言ってくれたのでやることにしました。
ある時、本当は僕はイラストレーターになりたいんです、という話をしたら店主が「それやったらうちのメニューを作ってくれないか」と言ってくれた。そこで木を本みたいに蝶番(ちょうつがい)でつないで小さな絵と描き文字でメニューを作りました。僕は初めて絵を描いてお金をもらいました。その喫茶店のメニューはその後もいろいろ作りました。あれから55年、今も僕の絵を使ってくれています。
それからいろいろあり、1974年頃、僕は心斎橋の大丸から東へちょっと行ったところの小さなビルの5階で「ハローアゲン・スタジオ」というデザイン事務所をやっていました。このビルの隣のビルの1階に陽気なおばちゃんとおねぇちゃんがやってる当時でもちょっとレトロな感じの「アート・コーヒー」という喫茶店がありました。僕はちょいちょい仕事をサボってそこでコーヒーを飲みながらおばちゃんたちとアホな話をしてました。ここのフレンチトーストはほんまにおいしかったなぁ。
そんなある日、おばちゃんに「あのね、そろそろ店やめようかな思うてますねん。それでもしよかったら店のテーブルや椅子とか使うてくれへん?」と言われた。「えっ、ほんまに? 寂しなるなぁ、もちろん喜んで使わしてもらいます」と言ってテーブル1卓と椅子2脚をもらいました。その椅子2脚は今も我が家にあります。(版画イラスト・文/森 英二郎)
◆木版画入門講座6・21に体験会
〇…「すみだ報知」プレゼンツによる森さんの『木版画イラストレーション入門講座』がJR錦糸町駅「テルミナ」6階の「よみうりカルチャー錦糸町」で開講します。木版画の基本的な道具の使い方や作り方、イラストレーションの楽しさが学べる定期講座で、森さんの版画イラストのような作品が描けるようになるかも!? 7月5日(土)スタートを前に、体験会を6月21日(土)に実施。詳細は公式HP(QRコード)で。申し込み・問い合わせはTEL03・5625・2131まで。
◆森 英二郎(もり・えいじろう)1948年、京都府生まれ。大阪府育ち。本の装画、挿絵を中心に木版画でイラストレーションを描く版画イラストレーター。関西のタウン情報誌「プレイガイドジャーナル」の表紙イラスト、月刊誌「東京人」(都市出版)で作家・川本三郎氏の連載「荷風と東京」の挿絵などを担当。装画は絵本「おとうさんのうまれた うみべのまちへ」(福音館書店)、単行本「荷風と東京」(都市出版)など。昨年新潮社から発売された「『放浪・雪の夜』織田作之助傑作集」(新潮文庫)のカバー絵も担当。2010年12月から墨田区在住。「月1回ぐらいののんびりしたブログで、どうでもええ話とちっちゃい絵を描いてます」という「森英二郎のブログ・MEXOS―HANAXOS」はコチラから。