2025年5月11日8時00分 スポーツ報知
墨田区の喫茶店とカフェの歴史は明治維新後、大工場や町工場が多く集積し、ものづくりの街として発展してきたことと深く関わっています。
戦後の高度経済成長期、墨田区には1万社近くの町工場があり、その多くは1階が工場、2階が衣食住一体の建物が多く、会議室や応接室などがありませんでした。そのため、地元の職人や中小企業の経営者が仕事の合間に利用する場として喫茶店が発展しました。コーヒーを楽しむだけでなく、商談や交流の場の役割も果たしていました。今でも、錦糸町や両国周辺には、昭和の雰囲気を残す純喫茶が点在しています。
その後、個人経営の喫茶店は減少していきましたが、老舗の純喫茶は地元の常連客に支えられ、根強く残りました。2012年の東京スカイツリー開業以降は、古民家をリノベーションしたカフェや都心からの移転店、バリスタのお店、天井の高い町工場の跡地を利用した焙煎場兼カフェなども増え、今まさに『すみだ新喫茶文化』が起こり始めています。現在、墨田区には200店舗近い個人経営店があり、カフェ巡りを楽しむ人々が訪れています。
「すみだ自家焙煎珈琲店連絡会」を中心に自家焙煎のお店も今や30店舗以上。単なるカフェだけでなく、職人の街らしくコーヒーやフードにこだわるお店が多く、地域コミュニティーの交流の場としても重要な役割を果たしています。昭和の面影を残す純喫茶と現代的なカフェが共存していることが、墨田区ならではの特徴です。近年は日本茶やハーブティー、バナナジュースなどをメインで扱うお店もあり、5月には隅田公園内に米粉を使った菓子とほうじ茶をメインとした日本茶の店「穂と香 HOJICHA FACTORY」という和テイストのカフェがオープン。カフェの多様化が進んでいます。(一般社団法人墨田区観光協会理事長・森山 育子)