鳴門親方 コーヒーが力水

毎朝一杯「ごっつぁんです」

2025年5月11日8時00分 スポーツ報知

 墨田区に部屋を構える大相撲の鳴戸親方(42、元大関・琴欧洲)は角界でも知られる“コーヒー党”だ。東欧・ブルガリア出身で10代の頃からコーヒーに親しみ、部屋の師匠となった今でもマグカップを脇に置いて弟子の指導を行っている。同区のシンボル・東京スカイツリーのすぐ近くの部屋で力士育成に心血を注ぐ元人気大関。珈琲愛好家としての「こだわり」「思い」を語った。(網野 大一郎)

マグカップを手に笑顔の鳴戸親方。コーヒーは指導に欠かせない(カメラ・佐々木 清勝) マグカップを手に笑顔の鳴戸親方。コーヒーは指導に欠かせない(カメラ・佐々木 清勝)
◆「大体ブラック」指導中2~3杯
 力士たちが体をぶつけ合う朝の稽古場で鳴戸親方は厳しい視線を送る。その傍らには必ずコーヒーがある。冬はマグカップにホット、夏はグラスにアイス。部屋の若い衆によると毎日2、3杯は指導中に飲むという。親方本人も「好きなので毎朝飲みますよ。味? 大体はブラックです。疲れているときはカフェラテにするか、砂糖を入れて飲んでいます」。相撲協会の親方として本場所で仕事をするときもコーヒーは欠かせない“相棒”だ。

 味へのこだわり、興味は強い。「コーヒーってみんな大ざっぱに言っていますけど、味が全部違いますよね」。現役時代のインドネシア・ジャカルタでの巡業(2013年)。ジャコウネコが排泄(はいせつ)した豆を洗浄して焙煎(ばいせん)する希少性の高いコーヒー豆「コピ・ルアク」を購入した。「何万円の価値があるのかな(笑)。世界で一番高いと言われるコーヒー。一応、買って飲んでみました」。普段愛飲するのは「僕が好きなのを知っているから」と後援者が差し入れてくれたものを飲んでいるという。

◆コンビニも愛用「最高のコスパ」
 巡業などで外出したとき、好んで飲むのがコンビニの淹(い)れたてコーヒー。愛好家としては意外な印象だが、説明を聞くと説得力がある。「皆さんがどう思うか分からないですけど、日本のコンビニのコーヒーが好きです。こんな安くて、豆を淹れて作る。パフォーマンスが高い、値段の割に味がおいしい」と力説。それを上回るのは大手チェーン店のものとした上で「100円台であの味が飲めるって、最高のコスパだと思うんです」と言葉に力を込めた。

 19歳でブルガリアから来日する前からコーヒーに親しんでいた。少年時代は両親がカフェインの入っていないものを出してくれた。レストランに行けばエスプレッソを好んで飲んだという。「砂糖を入れて飲んでいました。今思えば濃かったんでしょうね」。喫茶店には高校時代から通うようになった。「友人はみんな飲んでいたんです。学生は酒を飲まないし、日本のように種類がたくさんあるわけじゃない」と青春時代の思い出も明かした。

 レスリングに熱中していた時期でもあり減量のために無駄なカロリーを摂取できない事情もあった。「おなかが減ったときにブラックを飲んだら、ちょっとごまかせたんです」と振り返る。逆に体重を増やすことが求められた力士になると、コーヒーはほとんど飲まなかったという。「基本的には体にいいので飲むなら食後でした。それでも夜遅い時間に飲むと眠れなくなるので」。現役時代は稽古があり、終われば体の治療、休養…。喫茶店に行く時間は「そんなになかったですね」と言う。

 現在はコーヒーを飲む時間も増えた。それも出かけるよりも部屋で楽しむことが多い。そんな師匠を思って弟子たちから今年の誕生日(2月19日)にコーヒーメーカーを贈られた。それで淹れたコーヒーを飲みながらの会話が日課だ。「自分で部屋を持つと喫茶店に行くよりも弟子たちと過ごすことが多いですから。ちゃんこを食べた後、コーヒー飲みながら『調子はどうだ』と会話ができる」。観光地でもあるスカイツリーの“お膝元”にある部屋でこだわりの一杯を口にしながら未来の横綱を育てている。

 ◆鳴戸 勝紀(なると・かつのり)本名・安藤カロヤン。元大関・琴欧洲。1983年2月19日、ブルガリア・ベリコタルノボ市出身。42歳。相撲は大学から始め、2002年ドイツ国際大会でスカウトされ来日。佐渡ケ嶽部屋に入門し、同年九州場所で初土俵。05年九州場所後に、当時最速の所要19場所で大関に昇進。大関在位は史上4位の47場所。優勝1回。殊勲賞2回、敢闘賞3回。幕内在位57場所で466勝322敗63休。202センチ、155キロ。14年1月に日本国籍を取得。17年4月に佐渡ケ嶽部屋から独立し、欧州出身では初めて相撲部屋の師匠になった。

◆幕内欧勝馬ら所属力士14人
 〇…観光名所の東京スカイツリーや浅草に近い鳴戸部屋には海外からの稽古見学希望者も多い。所属する力士も幕内・欧勝馬を筆頭に14人。行司、呼出、床山が1人ずつ在籍している。詳しい情報は「部屋の公式サイトを見てほしいです」と鳴戸親方。場所ごとの星取表や写真ギャラリーなどを掲載。後援会への入会もサイト内で案内している。
 

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