版画イラストレーター・森英二郎さん】第11号コラム
  「昭和」も「江戸」も…奥深いすみだのまち

2025年9月30日8時00分 スポーツ報知

 すみだ地域コミュニティー季刊紙『すみだ報知』第11号は「ものづくりのまち」大特集です。職人による伝統工芸品や町工場で作られる“Made In SUMIDA”のモノは世界に誇れる逸品ばかり。ものづくりの祭典「すみだファクトリーめぐり」が楽しめる「スミファ」は、13回目の今年は11月14日(金)~16日(日)開催。見て知って、お買い物しながら“すみだのすごさ”を体感できる特製「お散歩マップ」も掲載。今号もすみだ愛たっぷりのスポーツ、文化・芸術情報盛りだくさんです!

森英二郎さんの描き下ろし版画イラスト原画 森英二郎さんの描き下ろし版画イラスト原画
森英二郎さんの「木版画イラストレーション入門講座」で使用するオリジナルテキスト 森英二郎さんの「木版画イラストレーション入門講座」で使用するオリジナルテキスト
◆「昭和」も「江戸」も…奥深いすみだのまち


 今回のテーマは「ものづくりのまち すみだ」ということなので、近所の八広や東墨田へ散歩がてら行ってみることにしました。この夏は猛暑で、危険な暑さ続きで散歩を控えていたから、せっかくなので旧中川方面からぐるっと遠回りして行くことにしました。

 北十間川から旧中川に出て平井方面に向かって歩く。スカイツリーができた頃、この川沿いを歩いているとき、左肩の後ろの方にスカイツリーが見えていた。やっぱり高いんやなぁ、あんなに大きく見えてるわ、と思いながらぶらぶら川沿いを歩き続けました。

 すると、あれっ、さっきは後ろに見えてたスカイツリーが左前方に見えてきました。どういうこと? 訳が分からなくなりました。そしてしばらく考えて、やっと分かりました。旧中川はとんでもなく蛇行しているのである。ぼくはこれを「お化けスカイツリー」と呼んでいる。僕だけですけどね。

 そんな旧中川をどんどん行くと荒川に出ます。このあたりの荒川は「荒川放水路」と言われ、ずっと昔に水害対策で人工的に作られた川らしい。『東綺譚』で有名な作家、永井荷風はこの放水路の荒涼とした風景が好きで、玉の井(現東向島)に行った帰りによく散歩していたらしい。その時も、アシと雑草と空の外、何もない、と書いている。今もたまにジョギングしてる人や、サイクリングの人がいるくらいで荒涼としている。

 この荒川の土手を歩いて四ツ木橋あたりまで行き、川を背にしてすみだのまちを眺める。びっしりと小さな工場や家の屋根がずうっと続いていて、遠くにはスカイツリーが見えます。土手を降りると八広です。前に墨田区に引っ越したよ、と大阪のアンティークの玩具の店をやっている友人に話したら、八広にはブリキの玩具の工場があって昔はよく行っていたよ、と話していたのを思い出しました。

 他にも皮鞣(なめ)し工場や木工所などがあって、作業しているのが外から見える。このあたりが昭和なら、隅田川をもう少し下って向島、両国あたりは江戸か。すみだのまちはまだまだ奥が深そうである。

 ということで今回はすみだの伝統的なものなどを描いてみました。    (版画イラスト/森 英二郎)

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 ◆森 英二郎(もり・えいじろう)1948年、京都府生まれ。大阪府育ち。本の装画、挿絵を中心に木版画でイラストレーションを描く版画イラストレーター。関西のタウン情報誌「プレイガイドジャーナル」の表紙イラスト、月刊誌「東京人」(都市出版)で作家・川本三郎氏の連載「荷風と東京」の挿絵などを担当。装画は絵本「おとうさんのうまれた うみべのまちへ」(福音館書店)、単行本「荷風と東京」(都市出版)など。昨年新潮社から発売された「『放浪・雪の夜』織田作之助傑作集」(新潮文庫)のカバー絵も担当。2010年12月から墨田区在住。「月1回ぐらいののんびりしたブログで、どうでもええ話とちっちゃい絵を描いてます」という「森英二郎のブログ・MEXOS―HANAXOS」はコチラから。

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