版画イラストレーター・森英二郎さん】第12号コラム
        両国は絵になるまち

2026年1月17日12時00分 スポーツ報知

 すみだ地域コミュニティー季刊紙「すみだ報知」第12号(2026年1月号)は「両国のまち」大特集です。いよいよ今春、江戸東京博物館がリニューアルオープン。建築家・菊竹清訓設計のユニークな建物には新たな仕掛けが施され、見どころも満載。両国は「国技館のある相撲の聖地」「葛飾北斎の生誕地」に加え、江戸の魅力や文化の奥深さを伝える発信拠点としてさらににぎやかに。墨田区出身の女子プロゴルファー・葭葉ルミさんのインタビューも掲載した今号も“すみだ愛”たっぷり、地域のスポーツ、文化・芸術情報盛りだくさんです!

森英二郎さんの描き下ろし版画イラスト原画 森英二郎さんの描き下ろし版画イラスト原画
実際の両国橋 実際の両国橋
◆両国は絵になるまち


 ◆両国橋欄干の“花火玉”

 ぼくはブログ「MEXOS―HANAXOS」(メクソハナクソと読みます)の中で「散歩の途中」というタイトルで稚拙な絵と文をいろいろ書いてきました。では、いつ頃から散歩を始めたのか考えてみると、若い頃は散歩をしたいなんて思うひまはなかった。

 その後、27歳から50歳くらいまでは犬と暮らしていたので、雨の日も寒い時も毎日散歩をしていた。しかし、これは「犬の散歩」である。ただ、その頃から歩くのは好きでした。

 ある暑い夏の日。愛犬と散歩に出かけようとしたら、ヨメさんに、暑いから適当に用を済ましたらさっさと帰っといでや、と言われた。当時住んでいた世田谷の赤堤から世田谷線の宮坂に出て、松原まで歩いて赤松公園の鉄棒にぶら下がっている時、ふと我が愛犬を見ると情けない目でぼくを見上げている。暑いし、もうそろそろ帰ろうよう、と言っていた(ように見えた)ことがあった。

 15年前、今の墨田区の押上に引越ししてきた時、もう犬もいないし、毎日部屋にこもってばかりでは健康にも良くなさそうやし、仕事以外に何か絵を描いてみたいなぁとも思い始めていたので、ブラブラと散歩に出かけることにしました。

 まずは近所からと出かけると、以前、仕事の取材で訪れていた寺島町(現東向島)に出た。こんなに近いんや、と嬉(うれ)しくなっていろいろ歩いていると、あの「鳩の街」もすぐそばで、向島には昔ながらの足袋屋さんも喫茶店もあってブログを書くネタの宝庫や、と嬉しくなりました。

 ちょっと足を伸ばせば、隅田川に出ます。この隅田川に架かる橋が大好きです。いちばん近い桜橋に出て、川沿いを下流の方に歩いて行くと、言問橋、吾妻橋、駒形橋、厩橋とずっと橋が架かっている。どの橋も個性的で面白いのですが、一番はなんといっても両国橋です。

 両国には国技館や江戸東京博物館、旧安田庭園、入り口にミスターの大きな写真を飾っているスポーツ報知さんとか、面白そうなところがいっぱいありますが、やっぱり一番絵になるのは、両国橋の欄干の、なんか宇宙からの物体のような丸い玉のデザインです。調べてみると、あれは地球儀らしいですが、花火玉にも見えます。そういえば歌川広重の名所江戸百景に「両国花火」という両国橋を越えて打ち上がる花火を空から描いた有名な浮世絵がありました。

 ということで、すみだのまちは絵になるところがいっぱいです。

 (版画イラスト・文/森英二郎)
 


 ◆森 英二郎(もり・えいじろう)1948年、京都府生まれ。大阪府育ち。本の装画、挿絵を中心に木版画でイラストレーションを描く版画イラストレーター。関西のタウン情報誌「プレイガイドジャーナル」の表紙イラスト、月刊誌「東京人」(都市出版)で作家・川本三郎氏の連載「荷風と東京」の挿絵などを担当。装画は絵本「おとうさんのうまれた うみべのまちへ」(福音館書店)、単行本「荷風と東京」(都市出版)など。『放浪・雪の夜』織田作之助傑作集」(新潮文庫)のカバー絵も担当。2010年12月から墨田区在住。「月1回ぐらいののんびりしたブログで、どうでもええ話とちっちゃい絵を描いてます」という「森英二郎のブログ・MEXOS―HANAXOS」はコチラから。
 

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