【2005年】特別賞 武豊

有馬記念を控えた武豊(左)は原監督の激励を受ける 有馬記念を控えた武豊(左)は原監督の激励を受ける
 突然の激励だった。特別ゲストとして招かれていた巨人・原監督があいさつを終えると、武豊の元へ一目散に向かった。「(ディープインパクトの3冠)おめでとうと言われた。でも、目は今週頼むぞと訴えてましたね」両手で固い握手。“インパクト愛”をしっかり受け止めた。

 表彰式の主役は、間違いなくユタカだった。黒のスーツに身を包み壇上に登場すると、会場は割れんばかりの拍手に包まれ、司会者の質問も集中した。

 ディープインパクトでの3冠達成(皐月賞、ダービー、菊花賞)。デビューから7戦負け知らずのサラブレッドは、ヒーロー不在の世の中で社会現象となった。25日の有馬記念では“4冠”に挑戦。「無敗で有馬を勝った馬はいない。達成して、その時に馬の背中にいられたら最高ですね」と力を込めた。

 原監督ならずとも興味津々の人馬。ゴルフの片山晋呉からは「武さんは国民の期待を背負う。大変じゃないかな」と気遣われたが、本人は余裕しゃくしゃくだ。「僕が走るわけじゃないんで…。馬が(しっかり)走ってくれると思います」相棒への信頼が揺らぐことはない。

 この日、有馬記念の枠順が決定。ディープインパクトは3枠6番からのスタートになった。「ダービーを勝った時が3枠5番。同じ赤い帽子でいいんじゃないかな。外めがいいとは思っていたけど、大丈夫。“6”は僕のラッキーナンバーだから」6番は、騎手デビューした87年に初勝利を挙げた思い出の番号。数々の記録の“第一歩”となった数字だ。

 5馬身差で圧勝したダービーは「5」、折り合いを欠きハラハラさせた菊花賞は「7」。どちらも経験した今、その中間の「6」なら、心配することは何もない。「今はとにかく、有馬記念のことで頭がいっぱい」と言いながらも「よく眠れますよ。特別なことは何もない」と言い切った。

 武の有馬記念制覇は、引退レースで復活した90年のオグリキャップが最初で最後。2着が6回と悔しい思いの方が多い。だからだろう。「ホント、いい結果を出したいよね」短く抱負を言い残して会場を去った。思い描くのは、この1年を象徴するような圧勝シーンのみ。武豊とディープインパクト。ダブル主演の“有馬劇場”が間もなく始まる。

 ◆武豊(たけ・ゆたか) 1969年3月15日、京都府生まれ。36歳。87年のデビュー以来、数々の記録を塗り替えて来たトップジョッキー。GI51勝、重賞217勝は、いずれも史上最多。先週までJRA通算2689勝。今年は210勝を挙げ、自身の持つ年間最多勝記録にあと「1」と迫っている。量子夫人は元タレント。

◆2005年プロスポーツ大賞受賞者

部門 受賞者 所属 年齢 受賞回数
野球(セ・リーグ) 金本知憲 阪神 37
野球(パ・リーグ) 渡辺俊介 ロッテ 29
男子ゴルフ 片山 晋呉 ファイテン 32 5年ぶり2度目
女子ゴルフ 不動裕理 サントリー 29 2年ぶり3度目
大相撲 朝青龍明徳 高砂 25 2年連続3度目
ボクシング 長谷川穂積 千里馬神戸 26 2年連続2度目
特別賞 武豊 JRA騎手 36

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