【1998年】野球(セ・リーグ) 佐々木 主浩

合計10億円のツーショット。佐々木(左)とイチローは、故黒澤明さんデザインのトロフィーを手に860万ドルの笑顔 合計10億円のツーショット。佐々木(左)とイチローは、故黒澤明さんデザインのトロフィーを手に860万ドルの笑顔
 ハプニングが起きたのは、表彰式後のインタビューでだった。日本テレビの福沢朗アナウンサーがイチローに5億円プレーヤーとしての感想を求めた時。イチローの口から意外な言葉が飛び出した。「隣の方も一緒です。さっき(話したら)同じでした」と右隣に座った佐々木にチラッと視線を走らせた。「やっぱり…」の声に、佐々木はただ苦笑いを浮かべるだけで、この爆弾発言を無言のうちに認めた。4億8000万円と推定されている来季の年俸は、実はタイトル料込みで5億円だった。
 球界史上最高年俸、サラリーマンの生涯賃金の2倍以上の収入を手にする2人が、「スゲエなあ」と言い合って、宝物のように抱いているものがある。今年9月6日、88歳の生涯を閉じた日本映画界の巨匠、故黒澤明監督がデザインした「太陽と月と星」をテーマにしたトロフィーだ。手に入れられるものをすべて手に入れてきた2人にとっても、これは何物にも代えがたい名誉であり、勲章だ。

 戦後最大の不況の風が吹き荒れた今年。日本人が無力感に打ちひしがれる中、人の心を温める太陽、暗やみを照らす月、そして希望の星に…。そんな願いを込めて贈られたトロフィーに球界をリードしていく2人は誓う。イチローは「これまでは割と自分のこと以外の部分でやってきたところがあるけど、これからは自分のためにやっていきたい」。

 その発言の真意を佐々木がすかさずフォローする。「個人が頑張って成績を上げれば、それがチームのためにもなるということなんです。優勝は続けてこそ意義がある。チームの優勝のために来年も頑張りたい」今年の日本スポーツ界のヒーローに、世界のクロサワの遺志は確実に受け継がれる。

 ◆佐々木 主浩(ささき・かずひろ) 1968年2月22日、宮城県生まれ。30歳。東北高では2年夏から3季連続甲子園出場。3年は春夏ともに8強入り。東北福祉大に進み大学通算11勝0敗。89年ドラフト1位で大洋(現横浜)入団。球界NO1ストッパーとしてハマの大魔神の異名を持つ。通算成績は382試合に登板、41勝32敗210セーブ。家族は香織夫人(30)と1男1女。189センチ、95キロ。右投右打。血液型O。

◆1998年プロスポーツ大賞受賞者

部門 受賞者 所属 年齢 受賞回数
野球(セ・リーグ) 佐々木 主浩 横浜 30
野球(パ・リーグ) イチロー オリックス 25 2年ぶり
男子ゴルフ 田中 秀道 信和ゴルフ 27
女子ゴルフ 服部 道子 三共生興 30
大相撲 若乃花 勝 二子山 27 5年ぶり2度目
ボクシング 辰吉 丈一郎 大阪帝拳 28 2年連続3度目
Jリーグ 中山 雅史 ジュビロ 31
特別奨励賞 高橋 由伸 巨人 23

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